日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

偶発性低体温症

低体温症hypothermiaとは深部体温(直腸温,膀胱温,食道温,肺動脈温など)が35℃以下に低下した状態をさす。事故や不慮の事態に起因する低体温を,低体温麻酔のように意図的に低体温とした場合と区別するために,偶発性低体温症accidental hypothermiaと呼ぶ。低体温症の原因には,@寒冷環境,A熱喪失状態,B熱産生低下,C体温調節能低下などがあり,これらが単独あるいは複合して発症する。具体的には,山岳遭難,水難事故,泥酔,薬物中毒,脳血管障害,頭部外傷,幼少児,高齢者,路上生活者,広範囲熱傷,皮膚疾患,内分泌疾患(甲状腺・下垂体・副腎などの機能低下)低血糖,低栄養などでおこりやすい。一般的に,軽度低体温(35〜32℃),中等度低体温(32〜28℃),高度低体温(28℃以下)に分類される。軽度低体温では骨格筋は戦慄(shivering)するが,中等度低体温では戦慄は消失し,高度低体温では筋は硬直する。同様に体温の低下は,神経系では感情鈍磨から昏睡状態へ,呼吸系では頻呼吸から徐呼吸・呼吸停止へ,循環系では頻脈から徐脈・心停止へといずれも抑制的に働く。心電図ではT波逆転,PQ・QR・QTSの延長,種々の不整脈などがみられるが,特徴的なものとしてQRS群の終末に出る陽性動揺はJ波(Osborn波)として有名である。30℃以下では心筋の被刺激性が著しく高まり致死的な不整脈を発生しやすく,患者の扱いには愛護的な配慮が必要である。

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