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学会について

代表理事挨拶

令和5年2月
一般社団法人日本救急医学会
代表理事 大友 康裕

 2023年2月代表理事を拝命致しました大友康裕でございます。昨年11月の役員選挙で非常に多くの投票を賜りました。これまでの活動を、評議員の先生方に高く評価頂いた結果であると、嬉しく思っているところであります。

 さて、ここ3年間のコロナ禍で、我が国の救急医療は何度も逼迫・崩壊しました。未知の恐怖のウイルス感染症であった初期の頃から、新型コロナ感染症患者さん診療の最前線に立ってきたのは救急医でした。コロナ感染がパンデミックとなり、おびただしい数の感染患者を受け入れつつ、非コロナの救急患者も必死で受け入れましたが、十分対応しきれずに、心肺停止や急性心筋梗塞、重症外傷患者の死亡率がコロナ禍前よりも上昇してしまい、私たち救急医は忸怩たる思いで一杯でした。ようやく新型コロナ感染流行が落ち着きつつある今も、救急医療は逼迫状態が続いています。おそらくコロナ禍が治まっても、救急医療体制は元の状態には戻らないでしょう。我が国の救急医療体制が、極めて脆弱で、ギリギリの余裕の無い状況下、現場の救急医の献身的な努力によって支えられていた事の証しであると思っています。救急医療が国民の生活の基盤であることを改めて認識するとともに、負荷が増加しても破綻しないよう、救急医療をより盤石にして行かなければならないと考えます。

 また、医師の地理的偏在が長い間大きな社会問題となっていることは、皆様ご存じの通りであります。これまで政府は、厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会「医師需給分科会」を設置し、様々な対策が検討され、実施されてきましたが、地域における医師不足・診療科偏在はいまだ解消してしません。さらに2024年4月からの時間外労働上限規制の医師への適応開始も状況を悪化させるでしょう。医師の個人的努力で辛うじて成り立っていた医師不足地域の医療は提供できなくなると危惧されます。本学会は2016年と2021年に、病院の救急部門の充実が、医師の地域偏在問題の解決につながることを証明することを目的として、全国の救急科専攻医プログラム施設へのアンケート調査を実施しました。その結果は、「『地方』かつ設置母体が『地方自治体または公的医療機関』という医師確保で最も苦戦する条件がそろっている病院でも、勤務している救急科専門医数が常勤医数増加に最も寄与している」ことを明確に示すものでした。このことから「医師不足/偏在を解決する方策として、『救急科専門医の大幅な育成数増加』が有効である」という考えに基づき、われわれ日本救急医学会として、社会への貢献に努めて参ります。

皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。