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お知らせ

「(仮称)救急医療基本法」  ――救急医療整備のための法的根拠の確保にむけて

平成21年12月25日

民主党 幹事長
小沢一郎殿

救急総研/救急医療関連3団体
日本救急医学会       
理事長 杉本  壽
日本臨床救急医学会     
理事長 有賀  徹
日本救急医療財団      
理事長 島崎修次

謹啓
 貴職に於かれましては、日ごろよりわが国の救急医療に対して格別のご高配をいただき、厚く御礼申し上げます。
 さて、一昨年来の、救急患者のいわゆる「たらいまわし」に関して、救急医療現場の真の実情、および問題の本質について、社会全般の理解が以前よりは広く進んでいるように思われます。
 しかしながら、この問題は、ご承知の通り、旧自民党政権においては抜本的な解決には至っておりません。それどころか、いまだ、その解決の道程も明らかになっていないというのが現実であります。
 私ども救急医療界と致しましては、多岐にわたる個々の政策、予算に関する要望もありますが、その一つ一つを論ずることは別の機会に譲ることとして、救急医療の整備・促進のための法的根拠、「(仮称)救急医療基本法」の次の通常国会での成立に絞って、貴党・新政権のご対応をお願いする次第であります。
 それにより、まずは、救急医療が今後整備・改善されるという希望の光を掲げていただきたい。そうすれば、すでに疲弊の極みにある現場のスタッフも、いましばらくの維持・継続の努力が可能となると考えるからです。
 猶予なく崩壊の危機に直面している救急医療の実情をなにとぞ正しく評価されて、国民の「いのち」を救うための最優先課題として、ご対応いただきますようお願い申し上げます。

敬具


「(仮称)救急医療基本法」  ――救急医療整備のための法的根拠の確保にむけて

目的

この法律(仮称・救急医療基本法)は、国民の「いのち」を救う・守ることを最優先の課題と考え、必要な救急医療・急性期医療の確保に対して、明確な法的根拠を提供することを目的とする。

体系

目的、基本理念、各役割分担等からなる「基本法」と、必要に応じての複数の「特別法」(後日の対応)から構成されるものとし、包括的であると同時に具体的・詳細に至る法体系であることを目指す。

内容

以下の各項目を実現するものであることが望まれる。

1. 国の基本的責務

救急医療(急性期医療)の整備・確保は国の責務と明示する。

2. 役割分担と責務の明確化

国、地方自治体、医療機関、医療従事者、民間企業、各種団体、一般国民等の役割を明確にし、各担当の責務を全うすることを義務づける。

3. 救急・急性期医療にかかわる医師等の確保

救急医のみならず、他の診療科の医師、救急関連医療職種、さらには事務職を含めて、救急医療に携わる人材の確保と労働環境の整備・労働基準法遵守を促進する。

4. 医療機関(病院等)の確保

地域における救急医療機関、救急病院群を中心とする、住民(一般国民)を含む地域全体で支援する体制を確保する。

5. 災害時等対応の配慮

日常時だけではなく、広域災害時、あるいは重症感染症の拡大時等に地域を越えて連携する体制を予め想定し整備する。
受傷者等の救命を最優先とする災害医療基本計画の立案、災害時対応のための日常救急の余裕(バッファ)の設定等を促進する。

6. 全国民の理解と参画の確保

全国民的に救急医療に対する理解を促進するとともに、救急手当講習等を通じて自らがその一端を担うという意識を高揚する。
一般市民が救急手当を行なった場合の、法的責任の免責や、救護者・被救護者の損害を補償する公的制度等を含むことを検討する。

7. 具体的期限・数値目標の決定

具体的な期限と、具体的な数値目標を掲げて、実効の確保できる法制度とする。
計画の立案、実施、評価、再立案、といったルーチンを設定する。



なお、救急関連3団体(日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本救急医療財団)は、このたびこれらを中心として、一般社団法人として「救急医療総合研究機構(略称・救急総研)」を設立し、特に社会的・政治的な問題に対して協働・協調し、具体的な解決策の策定・提案等を行ないます。

今後、学会(5月に臨床救急医学会が開催の予定)、マスコミ等を通じて一般国民へのアピール・情報発信を積極的に行うとともに、救急や時間外対応を行なう医師の組織化、大規模な国民運動を推進する等、政策実行に向けても継続的に活動を行なって行きます。

以上