日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

デュラフォイ潰瘍(びらん)

比較的まれな,胃・消化管出血をきたす病態で,1898年,フランス人医師,Dieulafoyにより初めて報告された(Eexulceratio simplex. Bull de l’Acad de Med 1898; 39: 49-84)。全消化管出血の1‐2%を占めるとされる。中高年に多く,男女比は2:1で男性に多い。小さな粘膜欠損をともなう露出血管(動脈)からの大出血をきたす病変で,多くは,胃上部(食道・胃接合部の6cm以内)の小弯にみられるが,まれに,下部食道,上部小腸,右側大腸,直腸にみられることもある。病理学的には,粘膜下に拡張,蛇行する動脈が認められ,その一部が粘膜を貫通しているのがみられる。表面を覆う粘膜が,動脈の拍動により徐々に浸食を受け,自然破裂をきたして大出血に至ると考えられているが,本症の発症には副腎皮質ステロイドホルモンの過剰産生が関与しているとの説もある。デュラフォイ(デュラフォア)潰瘍の名称が浸透しているが,いわゆる消化性潰瘍ではない。診断は内視鏡によりなされることが多いが,出血中に血管造影によって診断されることもある。治療としては内視鏡的止血術(電気的焼灼術,クリッピング術,エタノール注入法,レーザー焼灼術,バンド結紮術など)が一般に行われるが,血管造影下に経カテーテル動脈塞栓術が行われることもある。再発率は低く,外科的治療は必要としないことが多い。

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