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医学用語解説集

外科的気道確保

緊急に気道確保の必要があるにもかかわらず,マスク換気にて酸素化が保てず,気管挿管も困難な場合におこなう観血的手技。輪状甲状靭帯穿刺,輪状甲状靭帯切開,気管切開などがある。重度の顔面外傷,大量の口腔内出血,喉頭展開不能,喉頭・声門浮腫,急性喉頭蓋炎などが適応である。熟練した医師が2回試みても気管挿管できない場合には,直ちに輪状甲状靭帯穿刺あるいは輪状甲状靭帯切開をおこなうべきである。輪状甲状靭帯穿刺・切開ともに目標とする部位の視認が容易で,甲状腺を傷つけることなく施行することができ,緊急時には有用である。輪状甲状靭帯穿刺は,留置したチューブの口径が細いと気管内吸引と換気が十分にできないので,速やかに輪状甲状靭帯切開をおこなう。穿刺での換気は高圧ジェット換気が推奨されている。この場合呼気排出路は上気道なので,上気道閉塞を認める患者では圧損傷(barotrauma)を引きおこす可能性がある。輪状甲状靭帯切開の適応も基本的には輪状甲状靭帯穿刺と同じである。しかし,患者が12歳以下の場合,気管内腔開存に甲状軟骨が大きく関与しているため,輪状甲状靭帯切開後に声門下狭窄をきたす危険(つまり甲状軟骨による支持がなくなって気管内腔がつぶれてしまう)があり,施行すべきではない。