日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

全身性炎症反応症候群

SIRSは侵襲(細胞,組織を損傷する内因的および外因的刺激)の種類にかかわらず,サイトカインを中心とした免疫−炎症反応による非特異的な全身生体反応を把握するための臨床概念である。1992年にAmerican College of Chest PhysiciansとSociety of Critical Care Medicineの合同委員会が敗血症に関連する診断基準として発表し,敗血症とは感染症に起因するSIRSと定義した。以下の4項目のうち2項目以上を満たすときSIRSと診断する。臨床的で簡便であり迅速に診断が可能であるため,重症患者のスクリーニングとして広く浸透している。@体温<36℃または>38℃。A脈拍>90回/分。B呼吸数>20回/分,あるいはPaCO2<32 Torr。C白血球数>12,000/mm3,あるいは<4,000/mm3,または10%を超える幼若球出現。感染によらないSIRSを引きおこす病態として,外傷,熱傷,膵炎,外科手術などがあげられる。SIRSが重症化,遷延化することにより,各種のメディエータ・カスケード,好中球,凝固系などが活性化され臓器障害の原因となる。また,抗炎症性サイトカインによって引きおこされる代償性抗炎症反応症候群(compensated anti-inflammatory syndrome; CARS)や,SIRSとCARSが同時におこるMARS(mixed antagonistic response syndrome)なる概念も提唱されている(Crit Care Med 1996; 24: 1125-8)。CARSが遷延すると免疫抑制状態(immunoparalysis)に陥り,感染の遷延や新たな感染症を発症し臓器障害へ進展すると考えられている。

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