日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

筋膜切開

筋膜を切開することで筋区画内の圧を下げ,救肢を図る手技をいう。強固な筋膜および骨,骨間膜に囲まれた筋区画内の圧は血腫の形成や筋腫脹により上昇し,筋および神経を灌流する血流が障害され,筋区画症候群(compartment syndrome)を発症する。骨格筋は完全虚血が4時間を超えると不可逆性変化が始まり,8時間を超えると不可逆性変化は完成し,機能回復は望めない。末梢神経は,完全虚血が4時間までは可逆的であるが,8時間を越えると再生不能な軸索切断の状態となり,回復の可能性が低下するので,筋区画症候群が完成する前に筋膜切開を行い,筋区画内圧を下げて循環障害を回避しなければならない。四肢の激しい腫脹を呈する外傷や下肢動脈塞栓解除術後の患者が異常な四肢の痛みや痺れを訴えたときは,筋区画症候群を疑い筋区画内圧測定をおこなう。内圧測定は,測定したい筋区画の筋内に針を刺し,圧トランスデューサに接続する。筋区画内圧が30mmHgを超える症例では筋区画症候群を合併する危険性が高く,筋膜切開を考慮する。筋区画内圧が40mmHg以上,拡張期血圧との差が20mmHg以下のときには積極的に筋膜切開をおこなう。

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