非吸収性抗菌薬を消化管内に投与して,病院感染の主な原因である好気性グラム陰性桿菌および真菌の増殖を選択的に抑制し,人工呼吸器関連肺炎(VAP: ventilator associated pneumonia)やbacterial translocationによる血流感染などの病院感染症の発症を予防する方法である。薬剤の種類や投与量はさまざまであるが,グラム陰性菌に対してはポリミキシンとアミノグリコシド系薬剤やニューキノロン系薬剤,そして真菌に対するアムホテリシンを組み合わせて投与するのが一般的である。また,通常これら薬剤のペーストの口腔内塗布も併用される。従来,SDDはICU入室患者における感染症発症率を有意に減少させるが,死亡率は低下させないというのが定説であった。また,予防的抗菌薬使用による耐性菌誘導という問題点があった。しかし,最近のRCTやメタ・アナリシスにより,SDDを抗菌薬の全身投与と併用することにより,感染症発症率のみでなくICU死亡率を有意に低下させることが報告された(Chochrane Library, Issue 2, 2004)。