日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

フレイルチェスト

鈍的胸部外傷で多発肋骨骨折や胸骨骨折がおこると,正常な胸壁運動が障害される。2本以上の連続する肋骨(または肋軟骨)が2箇所以上で骨折する(分節骨折)と,その部分の胸郭は不安定となり,自発呼吸では吸気時に支持性を失った部分(flail segment)が陥凹し,呼気時に突出する奇異呼吸(paradoxical respiration)を呈する。これをフレイルチェストという。フレイルチェストは胸部の後方よりも前方・前側方で,また上部よりも下部で生じやすい。また,胸壁の損傷だけでなく肺挫傷をともなうことが多い。肋骨骨折にともなう疼痛は,自発呼吸や咳嗽を抑制し,低換気から無気肺をきたしやすい。一方,肺挫傷は肺コンプライアンスの低下とシャント率を増加させ,結果的に低酸素血症から呼吸不全を呈する。肺挫傷をともなうフレイルチェストの治療は,十分な鎮痛と急性呼吸不全に準じた治療(BIPAPマスクやレスピレータによる陽圧呼吸)をおこなう。肋骨骨折の偏位が著しいときやレスピレータ管理を短縮する目的で外固定術 (肋骨固定術) を併用することもある。

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