日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

悪性高熱症

悪性高熱症は全身麻酔の重篤な合併症で1960年に初めて報告された。頻度は比較的まれ(全身麻酔約74000例に1例,性別・年齢で大きく異なる)であるが1960年代の死亡率は約80%で,1980年以降では10%台に低下したものの依然としてきわめて危険な病態である。揮発性吸入麻酔薬(ハロタンなど),スキサメトニウムなどの筋弛緩薬などを用いた通常の全身麻酔を受けると,素因のある患者では悪性高熱症を発症する。特徴的な症状は筋硬直で,原因不明の頻脈,不整脈,代謝性アシドーシスなどが出現する。血圧は不安定となり,呼気炭酸ガス分圧上昇・低酸素血症が出現し,その後急激な体温上昇(15分間に0.5℃以上,40℃以上の体温)が始まる。横紋筋融解により尿は赤褐色調(ミオグロビン尿)を呈し,血清カリウム値が上昇する。診断はこれらの経過・臨床所見からおこなう。治療として誘因薬物の投与中止,ダントロレンの静注と全身冷却をおこなう。本症の原因として,誘因薬物の投与により,骨格筋内のカルシウム貯蔵庫である筋小胞体からのカルシウム放出速度が異常亢進していることが指摘されている。

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