日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

溺水

浸水(immersion)あるいは浸漬(submersion)により窒息をきたした状態を溺水(drowning)といい,溺水により死亡したものを溺死という。アメリカ心臓協会(American Heart Association; AHA)のGuidelines 2000ではウツタインの勧告にしたがい,near drowningの用語を使用しないように推奨している。病態の本質は低酸素血症であり,酸素欠乏の時間と低酸素血症の程度が最も重要な予後決定因子である。ただ超低水温で浸漬となった傷病者では,まれではあるが神経学的後遺症を残すことなく救命されることがある。このため死後硬直などの明らかな死の徴候がなければ救助者は現場で蘇生を開始すべきである。それでも,浸漬の時間が25分以上,心肺蘇生術の施行時間が25分以上,救急外来到着時脈拍触知不能の3点がそろえば,予後不良である。蘇生に成功すれば,低酸素性脳症による意識障害,肺の末梢血管の透過性亢進による急性呼吸窮迫症候群(ARDS),肺感染症などへの対処が治療のポイントとなる。従来,海水溺水か淡水溺水かで区別していたが,臨床的にはほとんど意味がない。

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