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医学用語解説集

酸素中毒

過剰な酸素が,生体の解毒機能を超えて有害な作用をきたした状態。障害の主な標的臓器は中枢神経系と肺である。2‐3気圧以上の高い分圧の酸素を吸入する高気圧酸素療法では,生体の細胞代謝が障害され,心窩部や前胸部の不快感・嘔吐・めまい・視野狭窄など,時には短時間で痙攣発作と昏睡がみられることがある。これが急性酸素中毒である。一方,吸入気酸素濃度50%以上の高濃度酸素を長時間吸入することにより気道粘膜や肺胞が障害され,重篤な場合は呼吸不全に陥る。障害機序は酸素由来のフリーラジカルによる細胞障害が想定されている。とくに人工呼吸器による呼吸管理をおこなっているときは,動脈血酸素分圧を70‐100mmHgに維持するように吸入酸素濃度を設定すべきとする報告もある(Castleman B, et al: N Engl J Med 1970; 282: 976)。可及的早期に吸入酸素濃度は下げるべきであるが,一般的に肺胞気酸素濃度が60%以下なら長期の酸素吸入でも安全とされている。