日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

緊張性気胸

気胸の一種であり,患側の胸腔内圧が異常に上昇した結果,患側肺虚脱,横隔膜低位,健側への縦隔偏位,静脈還流障害による心拍出量の低下などをきたしている状態。放置すると血圧低下,閉塞性ショックなどの重篤な状態を招く。胸壁開放創や肺の損傷部位から空気の漏出している部位が一方弁(one-way valve)のような構造となっているために,吸気時には胸壁開放創や肺から胸腔内へ空気が流入するものの,呼気時には弁が閉じ,空気が進行性に胸腔内に貯留してゆく(弁状気胸)。このような状態が持続すると患側胸腔内圧は次第に上昇し,緊張性気胸に至る。陽圧換気施行中はとくに注意すべきであり,人工呼吸器を装着したり,バッグバルブマスクで補助換気を開始した直後に急速に発症することがある。緊張性気胸は救急医療における急死の原因の一つであり,対応が遅れれば心停止に至るおそれがある。したがって緊張性気胸を疑った場合には,胸部エックス線写真による確診を待たずに,速やかな胸腔ドレナージを施行する必要がある。プレホスピタルケアでは,胸壁開放創に対し,ビニール片の三辺固定で開放創を被い,胸腔内への空気流入を防ぐことが推奨されている。

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