日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

心タンポナーデ

閉塞性ショックをきたす病態の一つで,心嚢内に多量の液体(もしくは気体)が貯留し,心の拡張障害から心拍出量低下によるショックと冠血流低下による突然の心停止を引きおこす緊急度の高い病態。心嚢内には,通常50ml程度の心嚢液が存在するが,心嚢内への出血などにより急激に血液が貯留した場合,比較的少量の血液(100ml程度)で,急性の心タンポナーデが発生する。一方,長い経過を経て慢性的に心嚢液が増加した場合には,明らかな臨床症状を呈さないこともある。原因として,急性心外膜炎,悪性腫瘍,外傷,急性心筋梗塞に続発する心破裂,急性大動脈解離等があげられる。注意すべきは,心タンポナーデは心嚢内液体貯溜により循環に障害が生じている病態であり,単なる心嚢液貯留とは明確に区別するべき点である。特徴的徴候としてBeckの三徴(頸静脈怒張,低血圧,心音減弱),奇脈,Kussmaul徴候等があるが,臨床症状のみから診断を下すことが難しい場合もある。心嚢液貯溜の確認には,心臓超音波検査が最も優れている。胸腹部鈍的外傷では,腹部超音波検査(FAST; focused assessment with sonography for trauma)の一環として,心嚢液のチェックをルーチンにおこなう習慣をつけなければならない。治療として心嚢穿刺や心膜開窓術が施行される。

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