日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

重症急性呼吸器症候群 (SARS)

コロナウイルスを病原体とする新しい呼吸器感染症。通常「重症急性呼吸器症候群」と訳されるが,「新型肺炎」と呼ばれることも多い。SARSウイルスは飛沫感染で伝播し,発症すると高い死亡率を示すため新興感染症として注目されている。隔離が必要な一類感染症に分類される。感染すると最大10日間程度の潜伏期間を経て発症し,症状として38℃以上の発熱,筋肉痛,頭痛,咳または息切れなどが見られる。この時期までは感染性が乏しく,80‐90%は自然寛解するが,10%程度はARDSにまで進展する。本症候群の胸部X線所見は,両側の胸膜側から急速に進行するスリガラス状陰影を特徴として,胸水を伴うことは少ないとされている。SARS剖検例のまとめによれば,全例がリンパ球によるびまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage; DAD)を呈しており,この呼吸不全は,ウイルスに対する過剰な免疫反応の結果,肺を標的臓器として発生したARDSであり,単純なウイルス性肺炎ではないとされている。

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