日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

心不全

心不全とは,心臓の異常のために全身の臓器の需要に見合うだけの血液を心臓が駆出できなくなった結果,惹起される循環系の病的状態(循環不全)である。循環不全は循環血液量の減少,血管床の増加などでも生ずるが,これらは心不全ではない。心不全症状はうっ血症状(呼吸困難,起座呼吸,浮腫)と低心拍出症状(疲労感,倦怠感など)からなる。一般にうっ血性心不全とは慢性うっ血性心不全状態を示し,ナトリウムと水分が過剰に蓄積され,体循環系または肺循環系に浮腫が存在している。一方,急性うっ血性心不全はナトリウムと水分が,体内に一定以上に貯留される前に体循環系から肺循環系にシフトすることにより生ずる肺うっ血が主体であり,体重増加を伴わなくてもよい。潜在性心不全とは安静時には心不全症状がなく,労作などの負荷がかかったときに心不全症状がでるものをいう。また代償された心不全(NYHA2-3度)や,安静時にも十分な拍出量を維持できない代償不全に陥った心不全(NYHA4度)といういい方もある。左心不全と右心不全は,その心不全状態の原因が左心側にあるか右心側にあるかの視座に基づいた分類であるが,とくに慢性状態では両者の関係は密接である。臨床上,左心不全は肺循環系の,右心不全は体循環系のうっ血を示す言葉として使用されている。心不全は種々の症状が合わさって出現してくる症候群で,その臨床所見(sings and symptoms)からいくつかの所見を組み合わせて診断される。また,左室収縮機能(駆出率)が正常である心不全状態では左室拡張機能低下の関与が明らかにされ拡張期心不全と呼ばれている。

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