日本救急医学会・医学用語解説集

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医学用語 解説集

胸部大動脈損傷

胸部大動脈損傷の80%強は大動脈峡部に発生し,早期に手術をしなければ致命的となる可能性の高い損傷である。本邦における胸部大動脈損傷は鈍的損傷によるものが圧倒的に多い。発生部位は,最も強固に固定されている左鎖骨下動脈分岐部直下の下行大動脈に好発する。発生機序は交通外傷や墜落などの際に生ずる慣性力や剪力によるとされている。大量血胸型では病院到着前に死亡する症例がほとんどであるが,縦隔血腫型では早期手術により救命が可能である。診断は胸部単純X線撮影により,上縦隔拡大(8cm以上),apical cap sign, aortic knobの不鮮明化などの所見がみられるならば,本症を疑って,胸部造影CT,食道エコー,大動脈造影により診断を確定する。診断が確定したならば,可及的速やかに手術をおこなう。対麻痺防止のための補助手段としては経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support; PCPS)が最も優れている。他に治療を優先すべき損傷を合併しているときは,収縮期血圧を120mmHg以下に維持しなければならない。患者の循環動態が未だ不安定で手術に耐えられないときの治療のオプションとして非侵襲的なステントグラフト内挿術がおこなわれるようになってきた(Thorac Cardiovasc Surg 1997; 9: 257)

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