Japanese Association for Acute Medicine
総会・学術集会 提言・報告等 地方会 学会誌 定款 名簿&施設一覧
専門医制度 指導医制度 用語集 入会案内 会員事務手続き リンク 会員専用ページ

提言・報告等

2003年12月3日

卒後医師臨床研修における必修救急研修カリキュラム

日本救急医学会
救急医学領域教育研修委員会
明石 勝也、猪口 貞樹、篠崎 正博、杉山 貢、田伏 久之
瀧  健治、寺沢 秀一、平出 敦、横田 順一朗

 救急医療は医の原点であり、かつ、すべての国民が生命保持の最終的な拠り所としている根元的な医療である。新医師臨床研修制度において必修科目に位置づけられているのは当然のことと言えよう。しかしながら救急医療の領域は広く、基本単位である3か月の研修期間で到達可能なカリキュラムの設定には本制度の基本設計である「プライマリイケアにおける基本的な診療能力を修得する」を重視することとした。
 具体的には厚生労働省による新医師臨床研修制度検討ワーキンググループの作成したカリキュラム案の救急医療関連項目をすべて包含し、これに日本救急医学会認定医診療実績において必要とされる項目の中から、研修期間中にも修得可能なものを加味して作成した。
 施設によっては救急部門の研修期間中に麻酔研修も行われるものと思われるが、本カリキュラムには含めていない。また多くの救急医療施設には集中治療室が併設されているが、プライマリイケアを重視する基本設計を尊重し敢えて集中治療については本カリキュラムからは除外した。これらの研修の重要性も十分に認知されるものであり、多くの研修者に選択科目として履修されることが望ましい。

 
I 一般目標(GIOs:General Instructional Objectives)
1. 生命や機能的予後に係わる、緊急を要する病態や疾病、外傷に対する適切な診断・初期治療能力を身につける。
2. 救急医療システムを理解する。
3. 災害医療の基本を理解する。
 
II 行動目標(SBOs:Specific Behavioral Objectives)
1. 救急診療の基本的事項
(1)バイタルサインの把握ができる。
(2)身体所見を迅速かつ的確にとれる。
(3)重症度と緊急度が判断できる。
(4)二次救命処置(ACLS)ができ、一次救命処置(BLS)を指導できる。
*ACLS (Advanced Cardiovascular Life Support)は、バッグ・バルブ・マスク等を使う心肺蘇生法や除細動、気管挿管、薬剤投与等の一定のガイドラインに基づく救命処置を含み、BLS(Basic Life Support)には、気道確保、心臓マッサージ、人工呼吸等の、機器を使用しない処置が含まれる。なお、日本救急医学会の認定するACLS基礎コースを受講することが望ましい。
(5)頻度の高い救急疾患・外傷の初期治療ができる。
(6)専門医への適切なコンサルテーションができる。
(7)大災害時の救急医療体制を理解し、自己の役割を把握できる。
   
2. 救急診療に必要な検査
(1)必要な検査(検体、画像、心電図)が指示できる。
(2)緊急性の高い異常検査所見を指摘できる。
   
3. 経験しなければならない手技

*必修項目:下線の手技を自ら行った経験があること。

(1)気道確保を実施できる。
(2)気管挿管を実施できる。
(3)人工呼吸を実施できる。
(4)心マッサージを実施できる。
(5)除細動を実施できる。
(6)注射法(皮内、皮下、筋肉、点滴、静脈路確保、中心静脈路確保)を実施できる。
(7)緊急薬剤(心血管作動薬、抗不整脈薬、抗けいれん薬など)が使用できる。
(8)採血法(静脈血、動脈血)を実施できる。
(9)導尿法を実施できる。
(10)穿刺法(腰椎、胸腔、腹腔)を実施できる。
(11)胃管の挿入と管理ができる。
(12)圧迫止血法を実施できる。
(13)局所麻酔法を実施できる。
(14)簡単な切開・排膿を実施できる。
(15)皮膚縫合法を実施できる。
(16)創部消毒とガーゼ交換を実施できる。
(17)軽度の外傷・熱傷の処置を実施できる。
(18)包帯法を実施できる。
(19)ドレーン・チューブ類の管理ができる。
(20)緊急輸血が実施できる。
   
4. 経験しなければならない症状・病態・疾患
A 頻度の高い症状

**必修項目:下線の症状を経験し、レポートを提出する。
      「経験」とは、自ら診療し、鑑別診断を行うこと。

(1)発疹
(2)発熱
(3)頭痛
(4)めまい
(5)失神
(6)けいれん発作
(7)視力障害、視野狭窄
(8)鼻出血
(9)胸痛
(10)動悸
(11)呼吸困難
(12)咳・痰
(13)嘔気・嘔吐
(14)吐血・下血
(15)腹痛
(16)便通異常(下痢、便秘)
(17)腰痛
(18)歩行障害
(19)四肢のしびれ
(20)血尿
(21)排尿障害(尿失禁・排尿困難)

B 緊急を要する症状・病態

*必修項目:下線の病態を経験すること。
      「経験」とは、初期治療に参加すること。

(1)心肺停止
(2)ショック
(3)意識障害
(4)脳血管障害
(5)急性呼吸不全
(6)急性心不全
(7)急性冠症候群
(8)急性腹症
(9)急性消化管出血
(10)急性腎不全
(11)急性感染症
(12)外傷
(13)急性中毒
(14)誤飲、誤嚥
(15)熱傷
(16)流・早産および満期産(当該科研修で経験してもよい)
(17)精神科領域の救急(当該科研修で経験してもよい)
*重症外傷症例の経験が少ない場合、JATEC (Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)の研修コースを受講するのが望ましい。
   
5. 救急医療システム
(1)救急医療体制を説明できる。
(2)地域のメディカルコントロール体制を把握している。
   
6. 災害時医療
(1)トリアージの概念を説明できる。
(2)災害時の救急医療体制を理解し、自己の役割を把握している。
ひとつ前の画面へ
このページの上へ