Japanese Association for Acute Medicine
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改正臓器移植法の円滑な実施に向けて臓器提供施設の負担軽減と解決策について

平成22年7月16日
厚生労働省健康局疾病対策課
臓器移植対策室
長辺見聡殿

一般社団法人救急医療総合研究機構

代表理事 島 崎 修 次

一般社団法人日本救急医学会

代表理事 杉 本    壽

一般社団法人日本臨床救急医学会

代表理事 有 賀    徹

昨年7月の国会で改正臓器移植法が成立し、本年7月からは本人の臓器提供に関する生前意思が存在しなくても、家族の承諾があれば脳死下臓器提供が可能となります。また、15歳未満の小児からの脳死下臓器提供が可能となり、脳死下臓器提供数の増加が予想されています。一方、救急医療施設や救急医の学術集団である日本救急学会は「脳死判定と判定後の対応ついて−見解の提言」(平成18年2月21日)を公表し、その中で「臓器移植手術を妥当な医療と認識し、脳死下臓器摘出と臓器提供は不可欠なものと理解する」と述べ、移植医療に協力する立場を表明しています。しかし、現行の法律においては脳死下臓器提供の際に臓器提供施設となる救急医療施設には時間的、および経済的に多大な負担が発生しています。日本臓器移植ネットワークの資料によると、脳死下臓器提供時の臨床的脳死診断から臓器摘出術終了までの時間は平均45時間33分(第1例目〜第80例)を必要とし、脳死下臓器提供施設の日常診療業務に多大な影響と負担を与えています。このような負担の軽減のために法的脳死判定時の手続きの見直しや法的脳死判定専門家支援チーム体制の確立、院内コーディネーターを含めた移植コーディネーターの増員と要請が急務であると考えます。 さらに、脳死下臓器提供時には経済的な負担を臓器提供施設に強いているのも現状です。脳死臓器提供管理料や臓器提供に関わる費用配分、あるいは日本臓器移植ネットワークからの200万円を上限とする補助を考慮したとしても、臓器提供施設における経済的な負担を十分補えるものではありません。

このような状況の下に改正臓器移植法が施行されると、臓器提供施設である救急医療施設の負担がますます増加し、結果的に臓器提供数増加の阻害要因になります。現在、行政や各関連団体において法律施行規則やガイドラインが作成されつつあり、現場の実情に合ったルール作りが進行しています。しかしながら脳死下臓器提供に協力する救急医や救急医療施設がさらに協力し易くなるような環境作りに関しては十分に議論がなされておりません。そこで今回、救急医療総合研究機構は円滑な脳死下臓器提供のシステムを構築するために以下の項目を提言したいと思います。

円滑な脳死下臓器提供のシステムを構築するための提言

  1. 現行の手続き、例えば臓器摘出チーム派遣タイミングの見直し
  2. 法的脳死判定時の脳死判定専門家支援チームの構築
  3. 診療報酬における脳死判定料の新設
  4. 診療報酬を含めた法的脳死判定時の経済的補助
  5. 院内コーディネーターを含めた移植コーディネーターの増員

@現行の手続き、例えば臓器摘出チーム派遣タイミングの見直し

現行の手続きには臨床現場や臓器提供者家族の気持ちと解離した部分が存在しています。例えば、現状では第2回目の法的脳死判定終了後に移植施設への連絡が行われ、その後移植用臓器の摘出に当たるスタッフらが提供病院に向かうこととなっています。その結果、現在の手順では、第2回法的脳死判定の終了から摘出手術開始までに約13時間(日本臓器移植ネットワーク資料による)を必要としています。この間、臓器提供施設である救急医療施設はもちろん、家族自体にも多くの負担を与えており、上記の連絡は第1回目の判定終了後に行うべきと考えます。なお、過去の法的脳死判定の手順において1回目判定で脳死判定基準を満たさなかったことはなく、1回目の脳死判定終了後に移植施設への連絡を行うことでの不都合はないと考えます。脳死下臓器提供の一連の手順を臨床現場や臓器提供者家族の視点に立って、再度見直すことが必要と考えます。

A法的脳死判定時の脳死判定専門家支援チームの構築

平成18年4月に日本臓器移植ネットワークの要請に基づき日本救急医学会、日本脳神経外科学会、日本麻酔科学会が学会としての協力表明がされています。特に日本救急医学会は学会指導医に呼びかけ、その結果126名の学会指導医が法的脳死判定時の協力可能な医師として日本臓器移植ネットワークに登録されています。また、日本脳神経外科学会は法的脳死判定時の脳波測定や判読に対しての支援を行っています。しかし、これらの支援はそれぞれの学会員の自発的な活動によって行われ、支援のための経費(交通費など)に関しても支給されていないのが実態です。法的脳死判定が正確、かつ円滑に行われ、臓器提供施設の負担軽減のためにもシステムとして法的脳死判定時の脳死判定専門家支援チームの構築が必要です。

B診療報酬における脳死判定料の新設

前述の日本救急医学会「脳死判定と判定後の対応ついて−見解の提言」の中には “脳死は臓器提供の有無にかかわらず正確に診断し、その診断結果を患者家族、あるいはその関係者に正しく伝えるべきである。しかし、脳死診断後の対応については患者本人の意思、患者家族、あるいはその関係者の考え方を十分考慮して決定する。”との記載があります。すなわち、脳死診断は臓器提供の有無とは無関係に、純粋な医療行為として位置づけられています。脳死診断は脳死判定基準を用いて行われますが、高度な知識と経験を必要とします。しかしながら、脳死の診断における一連の医療行為に関しては診療報酬の算定ができないのが現状です。ちなみに、脳死判定の際に行われる脳波検査500点(D235)、聴性誘発反応検査670点(D236)、脳波検査判断料140点(D238)、平衡機能検査(刺激又は不可を加える特殊検査:前庭反射)120点(D250)等を考慮し、かつ脳死判定自体が2回施行されることや高度な知識、経験と判断が必要とされることを総合的に勘案すると脳死診断料として5000点前後の診療報酬を新設すべきと考えます。

C診療報酬を含めた法的脳死判定時の経済的補助

現在、脳死下臓器提供関連費用交付金は脳死臓器提供管理料58万円、各臓器の移植に係わる費用配分(14万円〜34万円)、及び200万円を上限とする日本臓器移植ネットワークからの補助で合計約350万円が上限となります。しかし、現状における脳死下臓器提供は医師部門だけではなく、看護部門、臨床検査部門、医療安全部及び事務部門など院内各部署の関与が必要となります。また、日本臓器移植ネットワーク東日本支部のアンケート結果では、法的脳死判定時に関与する病院職員は警備員などさらに多職種に及ぶことが明らかになっています。さらに、臨床的脳死診断から臓器摘出手術が終了するまで45時間以上を要する現状を考慮すると、脳死下臓器提供時には臓器提供施設に人件費だけでも多大な負担を強いています。以上のような状況を考慮すると約350万円を上限とする現在の経済的補助では十分ではなく、法的脳死判定時には臓器提供施設に500万円以上の経済的補助が得られるようにすべきです

D院内コーディネーターを含めた移植コーディネーターの増員

円滑な臓器提供はもちろん、脳死下臓器提供の普及と啓発のために院内コーディネーターを含めた移植コーディネーターの活躍が重要です。したがって、改正臓器移植法が施行されるに当たって移植コーディネーターの増員が急務であると考えますが、特に脳死下臓器提供施設であるいわゆる四類型施設には院内コーディネーターが配備できるような予算的措置が必要です。

以上、救急医療総合研究機構、日本救急医学会、及び日本臨床救急医学会は円滑な改正臓器移植法の施行とその協力に向けて臓器提供施設の視点に立った提言を行いたいと思います。先生におかれましては本提言にご賛同を頂き、引き続き救急医療総合研究機構、日本救急医学会、及び日本臨床救急医学会にご支援を頂きたく存じます。

 
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