Japanese Association for Acute Medicine
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「地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組みの構築に関する提言」について

会員各位
有限責任中間法人日本救急医学会
代表理事 山本 保博

この度、本学会及び日本産科婦人科学会において、提言をまとめましたので、会員の皆様にご案内申し上げます。

平成20年11月18日

地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する提言

日本産科婦人科学会・日本救急医学会
はじめに
  • 妊娠、分娩中に発生する重篤な母体合併症への対応については、各地域において分娩取扱施設と救命救急センターとの連携体制の整備が望ましいが、施設ごと、地域ごとの努力に任せられている。国および都道府県における周産期医療体制と救急医療体制の整備はこれまで基本的には別個に進んできており、「母体救命救急」症例への対応に関する明確な指針は示されていない現状がある。
  • このような現状をふまえ、母体救命救急医療体制に関する専門家の団体として、日本産科婦人科学会と日本救急医学会は、共同で作業部会を設置し検討を行ってきた。その結果、母体救命救急体制整備を行っていく際に特に検討が必要と考えられる事項について提言としてまとめたので報告する。
  • 本提言は、国、都道府県、地方自治体、医療機関、現場の医療スタッフ、一般の住民が、それぞれの立場でこの問題を考えていただくための材料を提供するものである。わが国の救急医療体制・周産期医療体制には他にも整備を必要としている多くの問題があるが、この提言はあくまでも、その中の一つの問題である母体救命救急体制整備のみを取り扱っている。全体としての体制整備も同時に必要であることは論を待たない
本提言の基本的な考え方:
  • 周産期救急医療を含め救急医療は地域医療であり政策医療である。適切な医療が提供可能な環境の整備は、各地域の住民の理解に基づいて、国及び地方自治体の責任で行われるべきである。
  • 周産期救急医療を含め救急医療の現場で、医療関係者はきわめて過酷な条件下での勤務を余儀なくされている。早急に勤務環境の整備と勤務実績に応じた処遇がなされる必要がある。過酷な勤務の現状を放置したままで、確実な救急対応のみを求めれば、医療スタッフはさらに疲弊し、現場からの急速な離脱が進行することになる。現状が既に到底持続可能な状態にないことを十分に認識した上で、施策が検討される必要がある。
  • 母体救命救急医療は周産期医療と救急医療の境界に位置している。縦割りの弊害は行政・学会・病院の各段階でこの問題に影響を与えている。その弊害を各段階で取り除き、効率のよい合理的なシステムの構築を行っていく必要がある。
  • 周産期医療及び救急医療の状況は各地域でそれぞれ特徴をもっている。いずれの領域も人員の不足という大きな問題を抱えており、余力を持って対応するという状況にはない。各地域では、そのような自地域の特殊性を十分に考慮して、最適なシステムを構築する必要がある。本提言は各地域におけるそのような検討の枠組みを提供することを目的としている。
検討すべき課題:
国及び都道府県における母体救急担当部署と責任体制の明確化
救急医療体制整備の検討
  • 地域完結の原則と広域対応:救急医療は迅速な対応が求められる。各地域ではまず、地域完結をめざして、母体救急に対応する体制整備に努力する必要がある。しかし、地域の救急対応能力が限定され、しかも大きな地域格差がある現状を考慮すると、まれに発生する重症特殊救急病態を常に都道府県の枠内で対応することには無理があり、合理性に乏しい。ドクターヘリ等の搬送手段も含めた、広域連携の枠組み構築の検討を同時に緊急に進めていく必要がある。
都道府県における周産期医療関係者と救急医療関係者の交流の促進
  • 都道府県および地域の救急医療体制(病院前救護も含む)の枠組みと周産期医療の関係を明確にし、必要な部分は一体化して合理的かつ効率的な体制とするために、救急医療関係者と周産期医療関係者に加えて地方行政・消防機関・医師会等の関係者をも含んだ合同の検討会―作業部会等を設置する。
地域における周産期医療施設と救命救急センターの配置、連携に関する基礎調査
  • 周産期医療施設の配置
  • 救命救急センターの配置
  • 相互の連携の実績
    • 施設間連携システムの整備状況
    • 施設内連携の実情
    • 各医療機関における母体救急症例受入実績
  • 周産期及び救急医療情報センターの実態と相互連携実績
周産期医療関係者と救急医療関係者の症例検討の実施
  • 検討対象となる症例の範囲の設定
    例)母体の意識障害・コントロール困難な大量出血・ショック・その他、全身状態が悪化し周産期センターでは対応できない症例等
  • 母体救命救急症例の発生状況の調査
  • 症例検討の実施 問題点、改善点の指摘:両者で検討する
    • 症例発生時の対応
    • 施設内連携体制
    • 施設間連携体制
施設内連携を深める方策についての検討
  • 救命救急センターのある病院で総合周産期母子医療センターに指定されているところが50施設、地域周産期母子医療センターに認定されているところが75施設存在している。これらの施設において、施設内連携を深めることが、母体救急対応の効率化に直結すると考えられる。
救急医療の基盤を強化するための施策の遂行
  • 公務員医師の兼業禁止規定撤廃:重症患者に対しては医師の緊急的派遣が有効な場合がある。公務員医師の兼業禁止規定は、設立母体の異なる病院間の連携を抑制している。
  • 診療報酬上の問題の解決:周産期センターでいったん受け入れて入院した患者をその病院の救命救急センターに移して治療した場合、救命救急加算の対象とならない等の不合理な問題を解決することにより院内相互連携を深める必要がある。
都道府県における母体救急連携システムの立案と構築
  • 対策案:地域の実情に応じたシステムの構築をはかる。
    • 2次・3次医療圏ごとに連携システムを構築する。
    • 周産期医療情報センター及び救急医療情報センターの機能を強化し役割を明確化する。
    • 母体救急症例発生時の連絡体制を整備する。
      • 例)
        • 周産期医療機関ごとに母体救急症例の発生時に連絡する救命救急センターを定め、必要な情報交換を行っておく。
        • 各周産期母子医療センターは救命救急センターとの密接な連携を維持する。周産期医療機関は、症例発生時には総合周産期母子医療センターないし地域周産期母子医療センターを介して、救命救急センターとの連携をはかる。
      • 1次産科施設等から安易な受入依頼が救命救急センターに対しておこなわれないようにするための歯止めを検討する必要がある。
母体救急対応体制整備のために都道府県レベルで行うことが想定される作業手順
  • 医療側
  • 行政側
  • 周産期医療側と救急医療側の交流の促進
  • 都道府県医師会・産婦人科医会・救急医会から医療機関に対して参加の呼びかけをおこなう
  • 交流の場の確保
  • 都道府県の周産期医療協議会と救急医療対策協議会が、協力して母体救急体制整備に関する協議の枠組みを設定する。
  • 周産期医療施設および救命救急センターの配置とその診療実績・能力に関する調査を行う。
  • 症例検討と対策の立案
  • 検討の場の確保
  • 対策立案への参画(情報交換・搬送体制等)
  • 地域連携システム構築に関する合意の形成
  • 地域の実情に応じたシステム整備に関する提言を行う
  • 地域産科医療機関を対象とした母体救急症例への一次対応に関する研修の実施
  • 地域連携システム構築のための問題点の検討
  • 地域連携システム構築の推進
  • 地域の実情に即した情報センターの設置と運営

以上

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