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「救急救命士の病院内実習検討委員会」報告書

目次

救急救命士の病院内実習検討委員会について
「救急救命士の病院内実習検討委員会」 報告書

1 はじめに
2 現状把握のための調査結果について
3 病院実習の基本的方向について
4 病院実習の期間について
5 病院実習のための要件について
6 病院実習の評価について
7 おわりに
別添 救急救命士病院実習ガイドライン

別表1 実習項目
別表2 実習項目の経験目標数
別表3 評価表(養成期間中の実習)
別表4 評価表(就業前実習)


救急救命士の病院内実習検討委員会について
 
1 救急救命士の病院内実習検討委員会
 
 救急救命士の病院実習については、厚生省より通知されている「臨床実習施設の選定について(平成4年11月27日付け指第80号救急救命士養成所長宛厚生省健康政策局始動課長通知)」に基づき実習が行われているところであるが、本通知においては、具体的なカリキュラムの 内容までは言及されていないため、実施に際しての細目等を定めた病院実習マニュアルの策 定が強く求められてきた。

 本ガイドラインは、平成8年度から9年度にかけて、自治省消防庁、厚生省、日本医師会、日本救急医学会、消防本部等の各関係機関が相互に協力を得ながら、救急救命士の病院内実習検討委員会において審議が行われ、平成10年3月26日にその検討結果として報告されたものである。

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2 委員会構成
 
(1) 委員
委員長 日本救急医学会 救急隊業務検討委員会委員長 小林国男 帝京大学救命救急センター
委員 日本医師会常任理事 宮坂雄平 救急担当
日本救急医学会理事 辺見 弘 国立病院東京災害医療センター
〃 業務検討委員会委員 桂田菊嗣 大阪府立病院
坂本照夫 久留米大学高度救命救急センター
滝口雅博 弘前大学救急部
野口 宏 愛知医科大学救命救急センター
松原 泉 市立札幌病院救命救急センター
(2) オブザーバー
角田 隆 厚生省健康政策局指導課
松浦 功 文部省高等教育局大学病院指導室
中村正弘 東京消防庁救急部
佐藤文彦 仙台市消防局
佃 篤彦 救急振興財団救急救命東京研修所
高橋正樹 消防庁救急救助課

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「救急救命士の病院内実習検討委員会」報告書
 
1 はじめに
 
 救急救命士の資格を有する救急隊員に対して行う就業前教育につきましては、関係機関により鋭意御努力いただいているところでありますが、今般、厚生省、日本医師会、日本救急医学会、消防機関等の協力の下に、救急救命士の病院内実習検討委員会が設置され、平成10年3月26日に以下の報告がなされたので紹介いたします。
 
2 現状把握のための調査結果について
 
 救急救命士の病院内実習検討委員会では、病院実習の現状を把握するため養成課程中の実習受け入れ病院、養成課程中及び就業前病院実習を経てきた消防職救急救命士、救急救命士を有する消防本部に対してアンケートを行い、病院実習に係わる具体的な問題点や要望事項を調査した。その結果、実習受け入れ病院からは、実習の目的がはっきりしないことに対する困惑と、日常業務の上に加わる過剰な負担が読み取れた。一方実習生からは、自分の希望との間のギャップによる実習病院に対する不満が大きいことがわかった。いずれも病院実習の目的や到達目標がはっきりしないことと、実習病院の資格要件が定まっていないことに原因があり、病院実習ガイドラインを早急に策定することの重要性が明らかになった。
 
3 病院実習の基本的方向について
 
(1) 養成課程中の病院実習
 養成課程中の病院実習の目的は、目指している救急救命士の医療人としての自覚と、習得した知識を実際の医療の場で理解する一方、特定行為に関連する手技の習得に向けられるべきである。医療の現場を正しく認識するとともに、救急医療におけるプレホスピタルケアの位置付け、心肺蘇生における特定行為の位置付け、消防機関と医療機関との関係など、救急救命士として業を行うときに必要な基本的考え方を習得することも大切である。
 
(2) 資格取得後就業前の病院実習
 救急救命士資格取得後の就業前病院実習は、実習の中核をなすものであり、救急現場で適切な特定行為を含む救急救命処置が行えるよう、実戦に即した手技を身に付けることにある。すなわち、特定行為を含めた救急救命士の業務に係わる手技の習得、見学や介助を通しての医療機関で行われる救急処置の理解、救急患者が受ける治療内容の把握、などが含まれる。
 
(3) 生涯教育のための病院実習
 医療の進歩に対応する知識と技術の習熟、これまでに習得した技術の検証、医療との連携の維持などを目的として、病院実習を一定期間ごとに継続して行うことが必要である。
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4 病院実習の期間について
 
 病院実習の期間は、全体の教育カリキュラムのなかで設定した教育目標を達成できることが条件となる。実技習得のための実習については就業前実習に重点を置き、十分な実習期間を設けなければならない。生涯教育のための病院実習では、就業している期間中は継続して定期的に行われる必要がある。そのためには、養成課程中の病院実習は、消防職員に対する養成所にあっては80時間 (例えば、16時間× 5日又は 8時間×10日) 以上が妥当と思われる。資格取得後就業前の病院実習は、実習時間としては 160時間 (例えば、16時間×10日又は 8時間×20日) 以上が望ましいと思われる。生涯教育のための病院実習は、生涯教育全体のなかで検討されなければならないが、1年に3日程度行われるのが望ましい。
 
5 病院実習のための要件について
 
(1) 実習者の要件
 免許に係わる職種の実習においては、危険性の回避とともに実習効果をあげるためにも、実習者にも一定の条件が付されるのが原則である。病院実習を行うためには次のような条件が付されるべきと考えられる。
a. 病院実習、特に特定行為を含む実技実習に入る前に、模擬実習用人形などを用いたシミュレーション、実習生同士の相互実習など他の方法で十分な訓練を行っているべきである。
b. 実習に当たっては、実習者が実習に適するかどうかを実習生を派遣する側と受け入れる側が評価・確認し、実力に応じた実習方法を検討する必要がある。
 
(2) 実習病院の要件
 実習病院の一つの目安としては、日本救急医学会認定医指定施設若しくはそれと同等の施設要件を満たす施設が考えられる。また、救急救命士の養成に必要な病院実習の社会的な重要性を考えると、今後は全国に設置されている救命救急センターが病院実習の要となるべきである。実習の種類に応じてその目的を達成するためには、市町村の枠を越えた複数の病院群での実習を計画すべきである。
 
(3) 患者の同意
 救急救命士の病院実習については、何らかの形で患者側の同意を求めねばならない。病院の職員でない者が実習しているということと、資格のない人が処置等を行うという2つの点に関する同意が必要である。個々の患者から同意を得るか、一般的掲示、すなわちこの病院で救急救命士が実習している旨の掲示をしてインフォームドコンセントを得る必要がある。さらに本実習を行うことについて実習の目的と方法を明確にした上で、病院の倫理委員会等で承認を得ておかなければならない。
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6 病院実習の評価について
 
 救急救命士の病院実習では如何なる場合も、その修了後に評価が行われなければならない。特に資格取得後就業前の病院実習においては厳正な評価を行っておくべきである。病院実習の評価は本ガイドラインに沿って作成された実習病院ごとの病院実習マニュアルによって行われることが必要である。
 
7 おわりに
 
 以上のような検討を経て本委員会は、救急救命士のレベル向上を図るために、救急救命士病院実習ガイドラインを策定した(別添参照)。このガイドラインに基づき、病院実習を担当する病院は、各病院の実情に見合ったマニュアルを作成し、病院実習の効果を上げることを期待する。本ガイドラインならびに各病院で作成したマニュアルによって救急救命士の病院実習が実りあるものになり、救急患者の救命率がさらに向上することを願うものである。
 なお、「救急救命士病院実習ガイドライン(救急救命士の病院内実習検討委員会決定)」が策定されたことに伴い、消防庁及び厚生省において「救急救命士の資格を有する救急隊員に対して行う就業前教育の実施要領について」(平成6年4月1日付け消防救第42号各都道府県消防主管部長あて消防庁救急救助課長通知)及び「臨床実習施設の選定について(平成4年11月27日付け指第80号)」の実習要領について所要の改正を行っているものであることを付け加える。

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別添
救急救命士病院実習ガイドライン(原文)
 
1. 実習の基本的目標
 
(1) 養成課程中の病院実習
関連知識の応用と、特定行為に係わる技術の習得を主体とする。さらに、医療現場の見学と医療行為の介助を通じて、診療補助に対する理解を深める。
 
a. 病院の各部門を見学し、病院の機能について認識を深める。
b. 医師、看護婦など医療スタッフの仕事を理解し、その連携を知る。
c. 病院における救急患者への対応の仕組みを知る。
d. 救急室に搬入された救急患者への処置、診断の全体像を理解する。
e. ICUにおける患者管理を理解する。
f. 救急患者、家族に対するいたわりの心を持つ。
g. インフォームドコンセントの重要性を理解する。
 
(2) 資格取得後就業前の病院実習
特定行為を含む救急救命処置およびその他の処置の習熟を主体とする。
 
a. 指導医の指導下に処置、介助などを行う。
b. 救急室での処置に参加する。
c. 救急救命処置、とくに特定行為に習熟する。
d. ICUでの処置に参加する。
e. 看護婦の指導下に看護およびケアを行う。
 
(3) 生涯教育のための病院実習
習得した技術の検証と向上、さらに医療機関との連携を図り、一定期間毎に実施する。
 
a. 救急室、ICU、病室での実習を行う。
b. 救急患者の病態の理解を深める。
c. 救急活動のなかで生じた個々の実習者の疑問を解決する。
d. 病院実習を通じて自己学習の大切さを理解する。
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2. 実習の項目
 
(1) 養成課程中の病院実習
実習の基本的目標を達成するために、病院実習で行うことが望ましい項目を以下に示す。
 
1) 病院の機能と各種医療職の業務内容を理解するための見学
 
1.救急診療
2.ICU管理
3.各種検査(画像検査、検体検査、生理検査など。)
4.手術・麻酔
5.分娩
6.新生児・未熟児診療
7.精神科診療 など。
 
2) 実習行為
 
実習として望ましい具体的行為を、
A:指導者の指導・監視のもとに実施が許容されるもの
B:指導者が介助する場合、実施が許容されるもの
C:指導者の指導・監督のもとに、医行為を行う者を介助するもの
D:見学にとどめるもの
として別表1に示す。
 
実習項目の区分については、救急救命士が行うことが認められる行為については、就業前はA、養成課程中はBとした。また、侵襲性が低く医学生又は看護学生が臨床実習で許容されている行為についてはA、侵襲性が高い医行為についてはDとし、特定行為に関連する行為をCとした。
 
(2) 資格取得後就業前の病院実習
 
実習として望ましい具体的行為を、
A:指導者の指導・監視のもとに実施が許容されるもの
B:指導者が介助する場合、実施が許容されるもの
C:指導者の指導・監督のもとに、医行為を行う者を介助するもの
D:見学にとどめるもの
として別表1に示す。
 
実習項目の区分については、救急救命士が行うことが認められる行為については、就業前はA、養成課程中はBとした。また、侵襲性が低く医学生又は看護学生が臨床実習で許容されている行為についてはA、侵襲性が高い医行為についてはDとし、特定行為に関連する行為をCとした。

なお、両実習を通じて必要と思われる実技を伴う実習項目の経験目標数を別表2に示す。

 
(3) 生涯教育のための病院実習
 実習の基本的目標を達成するために、就業前実習の実習項目を基本とし、個々の実習者の課題に応じた病院実習を行う。症例検討会、研究発表会などにも参加する。
 
3. 実習の評価
 
病院実習に当たっては、本ガイドラインに従って作成した各病院のマニュアルに照らして評価表を作ることが望ましい。

別表3別表4に養成課程中と就業前病院実習の評価表の例を示す。

生涯教育における病院実習の評価は、生涯教育の全体教育のなかにおいて、消防職救急救命士については消防本部ごとに病院実習の記録を保存するのが望ましい。(別表3、4は略)


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別表1 実習項目
A:指導者の指導・監視のもとに実施が許容されるもの
B:指導者が介助する場合、実施が許容されるもの
C:指導者の指導・監督のもとに、医行為を行う者を介助するもの
D:見学にとどめるもの
  実習項目 養成課程中 就業前
1. バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数など) A A
2. 身体所見の観察(視診、触診、聴診など A A
3. モニターの装着(心電図、パルスオキシメーターなど) A A
4. 酸素投与 A A
5. バッグマスク法 A A
6. 気管内挿管 C C
7. 食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク B A
8. 気道内吸引 B A
9. 喉頭鏡の使用 A A
10. 人工呼吸器の使用 D D
11. 胸骨圧迫心マッサージ A A
12. 開胸心マッサージ D D
13. 末梢静脈路確保 B A
14. 点滴ラインの準備 A A
15. 中心静脈確保 D D
16. 輸液 C C
17. 輸血 C C
18. 除細動 B A
19. 緊急薬剤の使用 D C
20. 循環補助(ペースメーカー、IABP) D D
21. 創傷の処置 C C
22. 骨折の処置 C C
23. 胃チューブ挿入 C C
24. 胸腔ドレナージ D D
25. ナーシングケア(清拭、体位変換など) A A
26. 精神科領域の処置(厚生省通知参照) A A
27. 小児科領域の処置(厚生省通知参照) A A
28. 産婦人科領域の処置(厚生省通知参照) B A
 
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別表2 実習項目の経験目標数(養成課程中ならびに就業前実習を通して)
 
項目 細目 目標数(回)
実施
(一部介助も含む)
バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数など) 15
身体所見の観察(視診、触診、聴診など) 15
モニターの装着(心電図、パルスオキシメーターなど) 15
酸素投与 10
バッグマスク法 3
食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク 3
気道内吸引

10

喉頭鏡の使用 3
胸骨圧迫心マッサージ 3
末梢静脈路確保 3
点滴ラインの準備 10
除細動 3
ナーシングケア(清拭、体位変換など) 10
精神科領域の処置(厚生省通知参照) 3
小児科領域の処置(厚生省通知参照) 3
産婦人科領域の処置(厚生省通知参照) 3
介助
(一部介助も含む)
気管内挿管 3
輸液 10
輸血 3
緊急薬剤の使用 3
創傷の処置 3
骨折の処置 3
胃チューブ挿入 3
 
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別表3 評価表(養成課程中の実習)
A:指導者の指導・監視のもとに実施が許容されるもの
B:指導者が介助する場合、実施が許容されるもの
C:指導者の指導・監督のもとに、医行為を行う者を介助するもの
D:見学にとどめるもの
項目 細目 実施数 自己評価 指導医評価
A バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数など)      
身体所見の観察(視診、触診、聴診など)      
モニターの装着(心電図、パルスオキシメーターなど)      
酸素投与      
バッグマスク法      
喉頭鏡の使用      
胸骨圧迫心マッサージ      
点滴ラインの準備      
ナーシングケア(清拭、体位変換など)      
精神科領域の処置(厚生省通知参照)      
小児科領域の処置(厚生省通知参照)      
B 食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク      
気道内吸引
     
末梢静脈路確保      
除細動      
産婦人科領域の処置(厚生省通知参照)
     
C 気管内挿管      
輸液      
輸血      
創傷の処置      
骨折の処置      
胃チューブ挿入
     
D 人工呼吸器の使用      
開胸心マッサージ      
中心静脈確保      
緊急薬剤の使用      
循環補助(ペースメーカー、IABP)      
胸腔ドレナージ
     
平成  年  月  日
実習管理責任者             (印)
自己評価、指導医評価は次の3段階により評価する。
3点―自分でできる(理解している)
2点―援助があればできる
1点―できない(理解していない)
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別表4 評価表(就業前実習)
A:指導者の指導・監視のもとに実施が許容されるもの
B:指導者が介助する場合、実施が許容されるもの
C:指導者の指導・監督のもとに、医行為を行う者を介助するもの
D:見学にとどめるもの
項目 細目 実施数 自己評価 指導医評価
A バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数など)      
身体所見の観察(視診、触診、聴診など)      
モニターの装着(心電図、パルスオキシメーターなど)      
酸素投与      
バッグマスク法      
食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク      
気道内吸引      
喉頭鏡の使用      
胸骨圧迫心マッサージ      
末梢静脈路確保      
点滴ラインの準備
     
除細動      
ナーシングケア(清拭、体位変換など)      
精神科領域の処置(厚生省通知参照)      
小児科領域の処置(厚生省通知参照)      
産婦人科領域の処置(厚生省通知参照)      
C 気管内挿管      
輸液      
輸血      
緊急薬剤の使用      
創傷の処置      
骨折の処置      
胃チューブ挿入
     
D 人工呼吸器の使用      
開胸心マッサージ      
中心静脈確保      
循環補助(ペースメーカー、IABP)      
胸腔ドレナージ      
平成  年  月  日
実習管理責任者             (印)
自己評価、指導医評価は次の3段階により評価する。
3点―自分でできる(理解している)
2点―援助があればできる
1点―できない(理解していない)
 
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