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ERシステム FAQ

日本では1次救急、2次救急、3次救急という言葉がありますが、
どういう意味なのですか?

大まかには下記のように理解していただくと分かりやすいと思います。
1次救急:
軽症患者(帰宅可能患者)に対する救急医療
2次救急:
中等症患者(一般病棟入院患者)に対する救急医療
3次救急:
重症患者(集中治療室入院患者)に対する救急医療
これらの関係を図に示しますと図1のようになります。
図1 従来の日本の救急システム
従来の日本の救急システムを図解したもの

1・2・3次救急システムの問題点は何でしょうか?

このシステムの問題点は、医療する側が自分たちの診療範囲(軽症、中等症、重症)を決めていることです。患者の立場からすると自分が軽症なのか中等症なのか重症なのかはわからないため、どのような医療機関へ行けば良いのかわかりません。このように、医療する側と受ける側とのギャップ(患者が求める医療と提供する医療機関の医療が必ずしも合致するわけではない)が生じることが問題なのです。

高次施設への転送(紹介)システムがあるはずですが、
それはうまく機能していないのでしょうか?

確かに、1次救急施設に2・3次の患者が来院した場合や1・2次救急施設に3次救急患者が来院した場合、高次施設へ転送(紹介)するということが原則になっています。しかし、このシステムもあまり機能していません。理由は二つあります。一つは、軽症患者のように見えて実は重症患者だったというケースを正確に診断することができないことです。そして、二番目が、それができないために重症患者と確定されていない患者は高次施設が必ずしも引き受けてはくれないことです。1・2・3次救急システムは、軽症・中等症・重症患者に対する治療が主な医療で、それを選別する診断や選別法(advanced triage)が不十分なところが問題なのです。

現在の日本の救急システムにはどのような型があるのでしょうか?

現在の日本の救急システムは施設ごとに違いが見られますが、大別すると3種類に分かれます。まず、現在の日本の救急システムを大きく分けると「集中治療型(critical care型)」と「救急初期診療型」の二つに分けられます。そして、「救急初期診療型」は「ER型」と「各科相乗り型」の二つに分けることができます。「集中治療型(critical care型)」は主に上記の3次救急施設の救急医療体制で、「各科相乗り型」は上記の1・2次救急施設で比較的多く見られる救急医療体制です。以後、これらのシステムについて説明を加えていきます。

救急医療システムの分類

  1. 集中治療型(critical care型)
  2. 救急初期診療型
    1. ER型(ER:emergency room)
    2. 各科相乗り型
  仕事現場 仕事内容
集中治療型 集中治療室(病棟) 救急初期診療にはタッチせず重症入院患者の集中治療
ER型 救急外来 科にかかわらず、全ての科の救急初期診療
各科相乗り型 救急外来から病棟まで 自分たちの科の救急初期診療から病棟での治療まで

集中治療型救急システムとはどういうものかを教えてください

集中治療型救急システムとは、主に重症患者(3次救急患者)の治療を目的として発展したもので、従来の日本の1次・2次・3次救急システムの仕組みの中で捉えると理解しやすいと思います(図1)。このシステムの中での3次救急病院の役割は、救急患者の診断や初期治療という救急初期診療ではなく、重症患者(3次救急患者)に対する集中治療が主体となります。このシステムで3次救急病院が対応している救急患者(3次救急患者)は、全救急患者の5%以下だと言われています。

ER型救急システムとはどういうものかを教えてください

ER型救急システムとは、北米のER(ED: emergency department)で行われている救急システムを参考に作られたため「ER型」と名付けらました。基本的に全ての救急患者に対応する救急初期診療型で、ERで働くERドクター(ER専門医)は全ての科の初期診療を行います。また、walk inの患者にはトリアージナースが対応し、緊急性があるかないかの判断を行います。緊急性があると判断されれば、救急車で来院の患者同様、ERドクターの診療を緊急に受けることとなります。ERドクターは初期診療後、入院が必要な患者は全てその担当科に振り分け、入院患者や手術には基本的には関与しません(図2)。ERドクターが行う救急初期診療とは、診断・初期治療・advanced triage(disposition)をさします。ちなみに、advanced triage(disposition)とは、救急患者の方向性のことで、具体的には、帰宅させるのか入院させるのか、入院させるのならどの科にどの時点で話を持っていくかの判断のことです。

図2 ER型救急システム
図2 ER型救急システム

各科相乗り型救急システムとはどういうものかを教えてください

各科相乗り型救急システムとは、各科の救急担当医を集めて救急患者に対応するシステムです(図3)。一応、その施設で対応可能な科の救急患者を受け入れることになります。そして、患者が入院の場合は、救急外来で担当した科がそのまま入院まで担当していくこととなります。この型は前述した「ER型」と違い、救急外来では全救急患者を横断的に初期診療するシステムにはなっていません。この型の特徴は各科に振り分けるところからシステムが始まることで、最初に救急外来で患者に対応した者(看護師、研修医など)が担当科(担当医)を指定しなければなりません。この業務を看護師が担当した場合、トリアージナースとは言いません。あくまでも各科への振り分けナースです。ちなみに、日本の救急システムは、この型が最も多いのです。

図3 各科相乗り型救急システム
図3 各科相乗り型救急システム

ER型と各科相乗り型の根本的な違いは何でしょうか?

この二つの型の根本的な違いはERドクター(ER専門医)の存在の有無です。「ER型」がERドクターの存在によって成り立っているのに対して、「各科相乗り型」は各科救急担当医の存在によって成り立っています。ERドクター(ER専門医)とは、全ての救急患者の初期診療に対応する能力を持った医師であり、全ての救急患者に対応しますが、各科救急担当医は、自分の専門科の救急患者にのみの対応に終わります。

「各科相乗り型」はERドクターが不在なため、各科救急担当医の協力体制でシステムを組みます。各科救急担当医の協力体制を組むためには、各科救急担当医の診療前段階で診療科を指定する段階が必要になります。現状では、そこを看護師や研修医(上級医不在)が担当することが多く、この各科指定のトリアージは経験的に行われているのが現状で決して論理的と言えません。そのため、この段階で間違ったり(誤診したり)、各科の狭間に入ってしまう患者が多数存在することになります。ここが、このシステムの限界です。

ただ、日本ではERドクターの存在が明確にされていないため、ERドクターと各科救急担当医の区別がはっきりしないのが現状です。そうなると、救急部門が独立しただけで「ER型」と名のったり、そう思っている施設も少なくありません。この問題の解決法は、ERドクター(ER専門医)の定義(概念)を明確にしていくことであり、これこそが「ER型」救急システムの定義を行うために最も早い方法と思われます。

ERドクターとはどのような医師を指すのでしょうか?

「ER型」の絶対的必要条件として、全ての救急患者を横断的に診て救急初期診療を行う能力を有するERドクター(ER専門医)の存在が不可欠であることを述べてきました。しかし、現在の日本ではERドクター(ER専門医)の数は非常に少なく、将来的展望も未だ出ていないのも事実です。ERドクター(ER専門医)の養成はこれからの日本の救急医療の課題です。

そこで、ERドクター(ER専門医)の条件を並べてみます。

  1. ERの専任医師であり、各科の業務を兼任しない。
  2. 手術、入院患者、専門外来には関与しない。
  3. 全ての救急患者(全ての科)の初期診療を行う能力を有する。
  4. 上記3の初期診療とは、診断・初期治療・advanced triage(disposition)をいう。

現在の日本では、施設の問題などから「2」については異論が出るかもしれませんが、ここでは、基本的な考え方について触れたまでです。

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