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ER型救急専門医を育成するための後期研修プログラム

本プログラムは2006年9月23日に日本救急医学会ER検討特別委員会・後期研修プログラム検討小委員会(委員長 瀧野昌也)よりER検討特別委員会に提案され、第7回ER検討特別委員会(10月31日)で承認、さらに2007年2月19日の日本救急医学会理事会で承認され、日本救急医学会ホームページ内のER検討特別委員会ホームページに掲載された。

その後、ER検討特別委員会に会員から学術論文作成の際に引用可能な活字媒体にすることが必要との意見が寄せられ、2008年10月14日の第12回ER検討特別委員会で審議され、新たに委員会報告を行うこととなった。

1. プログラムの基本的性格

(1) 目的

本邦の救急医療の質を向上させるには、ERに専従して救急患者の診療にあたる専門医(以下、ER医)の養成が必要である。本プログラムは、本邦の救急診療に関わる研修病院が、ER医を育成する後期研修プログラムを作成するための資料となるものである。

(2) 研修対象

初期臨床研修を修了した医師(卒後3年目)を原則とするが、卒後4年目以降であってもER医を目指す医師であれば対象に含める。

(3) 日本救急医学会専門医制度との関係

本プログラム修了時に、日本救急医学会救急科専門医認定の申請資格を有するものとする。

2. プログラム施行施設の条件等

  1. 研修目標を達成するために、十分な数と内容の患者を受け入れるERが存在すること。
  2. ER医が1名以上常勤していること。ER医は救急科専門医資格を有することが望ましい。
  3. プログラム遂行の責任を負う担当者(プログラム責任者)が明示されていること。
  4. 参加する後期研修医の数は、目標の達成と教育の質が保証される範囲内とする。

3. 研修期間

4年間とし、このうち24か月間以上をERに専従して研修を行う。

4. 研修方法

ER医は、重症度・年齢・性別および罹患臓器によらず、すべての救急患者の診療を行う。このため、ER医の育成には、指導者のもとにおけるER診療とともに、他部門へのローテーションによる臨床研修が必要である。この両者の研修によって、ER医に必要な知識と技術を修得する。修得の必要な領域に関して目標を設定し、後期研修医とプログラム責任者はその達成に努める。

5. 研修の目標

(1) 診療スタンスからみた年次目標

以下に示す。各年度終了時までには年次目標に到達していることが望ましい。研修の進捗状況によっては、プログラム責任者の判断で目標よりも先に進んでよい。
多数の救急患者をトリアージしつつ同時進行で診療する能力を身につけること。

1年次
  • 一定期間の監視下の診療*
  • ER診療独特のアプローチ法の修得
  • 重要症候の鑑別診断の修得
  • 主にwalk-in患者の診療
  • 選択された救急搬送患者の診療
  • 手技の修得
2年次
  • 指導下での診療(疑問例、要注意例等での指導)
  • 複数患者の同時診療
  • Walk-in 患者、救急搬送患者ともに診療
  • 手技の修得
3年次
  • 指導下での診療(疑問例、要注意例等での指導)
  • Walk-in 患者、救急搬送患者ともに診療
4年次
  • 独立した診療
  • 診療現場の統括
  • 必要に応じて受ける指導

※監視下の診療とは、後期研修医の診療現場にER医が立ち会うこと、または後期研修医が患者を診察した直後に、ER医への症例提示を義務付けることを指す。報告を受けたER医は、自ら診察するのを原則とする。この期間は少なくとも3か月間必要である。それ以降は、個々の後期研修医の能力に応じてER医が適当と判断した時点で監視を解くが、疑問のある例、注意を要すると施設で定めた例、初めて経験する疾患ないし症候を有する例等については、積極的にER医の指導を受ける。

(2) 診療上の到達目標

1.症候に関する到達目標

1) 成人の症候に関する到達目標
GIO:
成人患者で症候に応じた適切な対応ができる。
SBO:
次の症候を有する成人患者に対し、医療面接、身体診察、検査の選択と検査結果の解釈、鑑別診断、応急処置と治療、disposition(処遇の決定)のうち、必要なものを取捨選択して正確かつ迅速に実施できる。

*二つ以上の症候の並列は、and/or の意味である。

  1. 心停止、呼吸停止
  2. ショック
  3. 意識障害
  4. 痙攣
  5. 頭痛
  6. 失神
  7. めまい、ふらつき
  8. 麻痺、脱力、痺れ:一過性のものを含む
  9. 言動がおかしい
  10. 胸痛、胸内苦悶
  11. 呼吸困難、喘鳴
  12. 動悸
  13. 咳、痰
  14. 喀血
  15. 腹痛
  16. 吐下血
  17. 下痢、嘔吐
  18. 便秘、腹部膨満
  19. 背部痛
  20. 尿閉、無尿
  21. 血尿
  22. 不正出血
  23. 関節痛
  24. 咽頭痛
  25. 歯痛
  26. 耳痛
  27. 鼻出血
  28. 眼痛、眼異物感
  29. 眼脂、結膜充血
  30. 視力低下
  31. 皮疹、掻痒
  32. 悪寒、発熱
  33. 倦怠感
2) 小児の症候に関する到達目標
GIO:
小児患者で症候に応じた適切な対応ができる。
SBO:
次の症候を有する小児患者に対し、医療面接(保護者との面接を含む)、身体診察、検査の選択と検査結果の解釈、鑑別診断、処置と治療、disposition(処遇の決定)のうち、必要なものを取捨選択して正確かつ迅速に実施できる。

*二つ以上の症候の並列は、and/or の意味である。

  1. 心停止、呼吸停止
  2. ショック
  3. 意識障害
  4. 痙攣
  5. 頭痛
  6. 呼吸困難、喘鳴
  7. 咳嗽
  8. 腹痛
  9. 嘔吐、下痢
  10. 耳痛
  11. 咽頭痛
  12. 皮疹
  13. 生後30日未満の発熱
  14. 生後3か月未満の発熱
  15. 3歳未満の発熱
  16. 3歳以降の発熱

2. 検査に関する到達目標

GIO:
救急患者の診療を確実に行なうために、各種検査を適正に利用できる。
SBO:
  1. 下記の検査を、適切な症例に対して適切な方法でオーダーし、その結果を症例に即して解釈できる。
  2. 画像検査では禁忌と造影剤の副作用を理解し、読影ができる。
  3. 検体検査では検体を自ら採取でき、検体の保存法を説明できる。
  4. 超音波検査、12誘導心電図、血液ガス分析、Co-oximeterによる測定、尿検査および迅速診断キットによる感染症検査を自ら施行できる。
(1)単純エックス線撮影 身体各部
(2)CT 脳(単純)
顔面(単純)
脊椎(単純)
胸部(単純、造影)
腹部(単純、造影)
骨盤(単純、造影)
(3)MRI 脳(単純)
脊髄(単純)
(4)超音波検査 心臓および大血管
腹部
婦人科領域
(5)12誘導心電図
(6)血液検査一般 血球計算
生化学
凝固機能
その他
(7)血液ガス分析
(8)Co-oximeter による測定
(9)尿検査 一般
沈渣
(10)細菌検査 血液培養
喀痰検査(結核菌検査を含む)
その他
(11)穿刺液の検査 髄液
関節液
その他
(12)迅速診断キットによる感染症検査 インフルエンザ
溶連菌
RSウイルス
ロタウイルス
その他

3. 領域ごとの到達目標

【各領域に共通の目標】
GIO:
ERでの診療を遂行するために、臨床医学の関連各領域について正確な知識・技術を身につける。
SBO:
  1. 経験すべき疾患の到達目標
    1. 次の疾患の疫学、病因、病態生理、症状、診断、治療、経過について説明できる。慢性疾患については概要でよい。
    2. 次の疾患でERを訪れる救急患者の初期診療ができる。
  2. 修得すべき技能の到達目標
    次の技能を確実に修得し、ERにおける診療に活用できる。
  3. 必要な知識の到達目標
    次の知識を身につけ、ERにおける判断に適用することができる。
1) 神経領域
1 経験すべき疾患
(1) 脳血管障害
脳梗塞急性期(大脳、小脳、脳幹の梗塞を含むこと)
脳梗塞後遺症
一過性脳虚血発作
脳内出血(大脳、小脳、脳幹の各出血を含むこと)
くも膜下出血
(2) 中枢神経系の感染症
細菌性髄膜炎
ウイルス性髄膜炎
脳炎
(3) 機能性頭痛
(4) てんかん発作
特発性
症候性
痙攣重積状態
(5) 頭蓋内圧亢進
(6) 無酸素性脳障害
(7) 慢性神経疾患(増悪例を含むこと)
(8) 末梢神経疾患(Guillain-Barre症候群、Bell麻痺を含むこと)
2 修得すべき技能
  1. (1) 正確で効率的な神経学的診察法
  2. (2) 腰椎穿刺
3 必要な知識
  1. (1) 血栓溶解療法
  2. (2) 聴性脳幹反応
2) 循環器領域
1 経験すべき疾患
(1) 心停止(院外発生例、院内発生例ともに含むこと)
(2) 不整脈
頻脈性不整脈(発作性上室性頻拍、心房細動、心房粗動、心室頻拍を含むこと)
徐脈性不整脈(U度およびV度の房室ブロックを含むこと)
その他の不整脈
(3) 冠動脈疾患
急性心筋梗塞
不安定狭心症
安定狭心症
心臓突然死
(4) 心筋の障害
心筋炎
心筋症
心不全(心原性肺水腫、右心不全を含むこと)
(5) 心膜疾患
心膜炎
心タンポナーデ
(6) 心内膜炎
(7) 弁疾患
(8) 心原性ショック
(9) 肺塞栓症
(10) 動脈疾患
急性大動脈解離
腹部大動脈瘤破裂
四肢主幹動脈の閉塞
(11) 静脈疾患(深部静脈血栓症を含むこと)
(12) 緊急に降圧を要する病態
2 修得すべき技能
  1. (1) 二次救命処置
  2. (2) 12誘導心電図の判読 
  3. (3) 心臓・大血管の超音波検査(レポート作成を伴うもの)
  4. (4) 緊急ペーシング(経皮、経静脈のいずれでもよい)
  5. (5) Swan-Ganzカテーテルの挿入と循環動態測定
  6. (6) 観血的動脈圧モニタリング
  7. (7) 除細動(同期させない除細動、カルジオバージョンの両方を含むこと)
  8. (8) 心嚢穿刺または心嚢開窓術
3 必要な知識
  1. (1) 大動脈内バルーンパンピング
  2. (2) 経皮心肺補助
3) 呼吸器領域
1 経験すべき疾患
(1) 上気道感染症
咽頭炎
インフルエンザ
(2) 気管支炎
(3) 肺炎
細菌性肺炎
異型肺炎
誤嚥性肺炎
肺膿瘍
間質性肺炎(急性増悪例を含むこと)
(4) 胸膜炎
(5) 肺結核(開放性結核を含むこと)
(6) 喘息発作(重症および重篤発作を含むこと)
(7) 慢性閉塞性肺疾患(急性増悪例を含むこと)
(8) 自然気胸
(9) 縦隔疾患
(10) ARDS(acute respiratory distress syndrome)
(11) ALI(acute lung injury)
(12) 過換気症候群
(13) 呼吸器の悪性疾患
(14) 気管切開カニューレ等のトラブル(閉塞、事故抜去など)
2 修得すべき技能
  1. (1) NPPV(non‐invasive positive pressure ventilation)
  2. (2) 動脈血の採取と血液ガス測定
  3. (3) 人工呼吸器を使った呼吸管理
  4. (4) 気管支鏡を使用した気道内吸引
3 必要な知識
  1. (1) 在宅呼吸管理
4) 腹部および消化器領域
1 経験すべき疾患
(1) ヘルニア(嵌頓例を含むこと
腹壁瘢痕ヘルニア
閉鎖孔ヘルニア
鼠径ヘルニア
大腿ヘルニア
(2) 食道疾患
食道炎
食道静脈瘤(破裂例を含むこと)
Mallory-Weiss症候群
(3) 胃疾患
急性胃炎
消化性潰瘍(腹痛、出血、穿孔例を含むこと)
胃アニサキス症
(4) 腸疾患
腸間膜動脈閉塞症
腸閉塞(機能性、単純性、絞扼性を含むこと)
虫垂炎
感染性腸炎
大腸憩室炎
虚血性腸炎
大腸穿孔
炎症性腸疾患の増悪
(5) 肛門疾患
痔核(出血例を含むこと)
脱肛(嵌頓例を含むこと)
肛門周囲膿瘍
(6) 肝疾患
急性肝炎
肝硬変
肝不全(急性肝不全、慢性の増悪を含むこと)
(7) 胆道疾患
胆管疾患(胆管炎、閉塞性黄疸例を含むこと)
胆石症
胆嚢炎
(8) 膵臓疾患
急性膵炎
慢性膵炎の増悪
(9) 急性腹膜炎
(10) 消化器の悪性腫瘍
(11) 留置されたチューブのトラブル(閉塞、事故抜去など)
2 修得すべき技能
  1. (1) 腹部超音波検査(レポート作成を伴うもの)
  2. (2) 胃管またはイレウス管の挿入
  3. (3) Sengstaken-Blakemoreチューブの挿入
  4. (4) 腹腔穿刺
  5. (5) 肛門鏡
3 必要な知識
  1. (1) 上部消化管内視鏡
  2. (2) 急性腹症に対する手術術式の概要
5) 腎・尿路領域
1 経験すべき疾患
(1) 急性腎不全
(2) 慢性腎不全(急性増悪例を含むこと)
(3) 透析患者の救急
(4) 尿路感染症
尿道炎
膀胱炎
急性前立腺炎
腎盂腎炎
(5) HUS(hemolytic uremic syndrome)
(6) 尿路結石症
(7) 精巣緊急症
精巣捻転
精巣上体炎
(8) 導尿困難
2 修得すべき技能
  1. (1) 尿検査
  2. (2) 膀胱カテーテルの留置
  3. (3) 腎尿路の超音波検査
  4. (4) 尿道造影
3 必要な知識
  1. (1) 透析の合併症
  2. (2) 各種血液浄化法
  3. (3) 腎後性腎不全の外科的治療の概要
6) 代謝・内分泌領域
1 経験すべき疾患または病態
(1) 糖尿病の救急
糖尿病性ケトアシドーシス
非ケトン性高浸透圧性昏睡
低血糖
(2) アルコール性ケトアシドーシス
(3) 甲状腺疾患の救急
(4) 副腎疾患の救急
(5) 補正を要する血清電解質異常
高ナトリウム血症
低ナトリウム血症
高カリウム血症
低カリウム血症
(6) 酸塩基平衡の異常
呼吸性アシドーシス
呼吸性アルカローシス
代謝性アシドーシス
代謝性アルカローシス
3 必要な知識
  1. (1) 経静脈栄養および経腸栄養
7) 血液・免疫領域
1 経験すべき疾患または病態
(1) 血液疾患
各種貧血
顆粒球減少症
血小板減少症
血友病
DIC(disseminated intravascular coagulation)
(2) アレルギー疾患
アナフィラキシー(ショック例を含むこと)
血管浮腫
(3) リウマチ性疾患
関節リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
3 必要な知識
  1. (1) 輸血
  2. (2) 骨髄穿刺
  3. (3) 血液悪性疾患の概要
  4. (4) 膠原病の概要
8) 感染症領域
1 経験すべき疾患または病態
(1) 伝染性単核球症
(2) 破傷風
(3) 原因不明の発熱
(4) SIRS(systemic inflammatory response syndrome:sepsisを含むこと)
(5) 感染性ショック
2 修得すべき技能
  1. (1) 標準的防護策
3 必要な知識
  1. (1) 針刺し事故への対応
  2. (2) 届出の必要な感染症
  3. (3) 輸入感染症
  4. (4) 特殊な感染症
    (壊死性筋膜炎、毒素性ショック症候群、ガス壊疽、劇症型A群溶連菌感染症など)
9) 外傷と熱傷
1 経験すべき疾患
(1) 頭部外傷(頭蓋内損傷、意識障害例を含むこと)
(2) 顔面外傷(顔面骨骨折を含むこと)
(3) 頸部外傷(外傷性頸部症候群を含むこと)
(4) 胸部外傷(胸郭損傷、胸部臓器損傷、血気胸を含むこと)
(5) 腹部外傷(腹腔内出血、管腔臓器損傷を含むこと)
(6) 骨盤骨折(骨盤輪骨折を含むこと)
(7) 脊椎の骨折と脱臼(不安定損傷を含むこと)
(8) 脊髄損傷(完全損傷、不完全損傷を含むこと)
(9) 上肢と上肢帯の骨折、脱臼(肩関節脱臼を含むこと)
(10) 手の外傷(腱損傷、神経損傷を含むこと)
(11) 下肢、下肢帯、足の骨折、脱臼(開放骨折、および股関節脱臼を含むこと)
(12) 四肢の主要血管または神経の損傷
(13) 指肢切断
(14) 捻挫、靭帯損傷、腱損傷(膝の靭帯損傷、アキレス腱断裂を含むこと)
(15) 多発外傷(AIS≧3 の損傷が2部位以上にあるもの)
(16) 妊婦の外傷
(17) 外傷の合併症
外傷後のショック
外傷性心停止
コンパートメント症候群
圧挫症候群
(18) 熱傷
外来通院可能な熱傷
広範囲熱傷
気道損傷
特殊部位の熱傷
(19) 体表面の化学損傷
2 修得すべき技能
  1. (1) 胸腔ドレナージ
  2. (2) 脱臼と骨折の徒手整復
  3. (3) 創傷処置
  4. (4) ギプスおよびシーネによる四肢の固定
  5. (5) 直達牽引および介達牽引
3 必要な知識
  1. (1) 侵襲と生体反応
  2. (2) 電撃傷と雷撃傷
  3. (3) 特殊な損傷(皮膚剥脱創、銃創、高圧圧注損傷、熱圧損傷など)
  4. (4) 減張切開
  5. (5) IABO(intra-aortic balloon occlusion)
  6. (6) 外傷に対するTAE(経カテーテル動脈塞栓術)
  7. (7) 緊急室開胸
  8. (8) 整形外科的装具
  9. (9) 外傷に対する緊急手術の概要
  10. (10) 運動器外傷に対する手術の概要
10) 中毒
1 経験すべき疾患
(1) 急性医薬品中毒
抗うつ薬中毒
睡眠鎮静薬中毒
抗精神病薬中毒
鎮痛薬中毒
その他の医薬品による中毒
(2) 農薬中毒(有機リン中毒を含むこと)
(3) 工業用品中毒(工業用アルコール中毒、腐食性物質による障害を含むこと)
(4) 家庭用品中毒(タバコ誤食、急性エタノール中毒を含むこと)
(5) 自然毒中毒
(6) ガス中毒(一酸化炭素中毒を含むこと)
(7) その他の中毒(乱用薬による中毒を含む)
2 修得すべき技能
  1. (1) 胃洗浄
3 必要な知識
  1. (1) 薬毒物動態の概要
  2. (2) 急性中毒に対する拮抗薬、解毒薬
  3. (3) 中毒に対する血液浄化法
11) 小児疾患領域
1 経験すべき疾患または病態
(1) 痙攣性疾患
熱性痙攣(単純型、複雑型を含むこと)
てんかん発作
痙攣重積
(2) 中枢神経系の感染症
髄膜炎
脳炎または脳症
(3) 上気道の感染症
急性上気道炎
咽頭炎、扁桃炎(溶連菌感染症を含むこと)
喉頭蓋炎
クループ症候群
インフルエンザ
(4) 下気道の感染症
急性気管支炎
急性細気管支炎
細菌性肺炎
ウイルス性肺炎
マイコプラズマ性肺炎
(5) 喘息(種々の重症度の発作を含むこと)
(6) 消化器疾患
急性胃腸炎(ロタウイルス感染症を含むこと)
腸重積
虫垂炎
便秘
(7) 鼠径ヘルニア(嵌頓例を含むこと) 
(8) 尿路感染症
(9) 生殖器の疾患
精巣疾患
包皮炎
(10) 代謝疾患
アセトン血性嘔吐症
低血糖
(11) 血管炎
川崎病
アレルギー性紫斑病
(12) 発疹をきたすウイルス感染症
麻疹
風疹
突発性発疹
水痘
手足口病
(13) 敗血症
(14) 輸液療法を要する脱水症
(15) 急性中耳炎
(16) 鼻出血
(17) 新生児の救急
(18) 外因性疾患
中毒
頭部外傷
肘内障
異物
(19) SIDS(sudden infant death syndrome)またはALTE(apparent life threatening event)
(20) 小児虐待
(21) 予防接種
2 修得すべき技能
  1. (1) 心肺蘇生
  2. (2) 気管挿管
  3. (3) バッグバルブマスク換気
  4. (4) 静脈路確保
  5. (5) 骨髄輸液
  6. (6) 腰椎穿刺
  7. (7) 導尿
  8. (8) 鎮静
  9. (9) 吸入療法
3 必要な知識
  1. (1) 学校保健
  2. (2) 注意の必要な感染症(O157大腸菌感染症など)
12) 産婦人科領域
1 経験すべき疾患または状態
(1) 正常分娩
(2) 妊娠の合併症
妊娠悪阻
妊娠中毒症
切迫早産
流産
子宮外妊娠
(3) 月経困難症
(4) 卵巣出血
(5) 付属器炎および骨盤腹膜炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群を含むこと)
(6) 卵巣腫瘍茎捻転
(7) 婦人科領域の悪性腫瘍
(8) 乳腺炎
2 修得すべき技能
  1. (1) 内診
  2. (2) 経腹壁超音波検査
  3. (3) 正常分娩の介助
3 必要な知識
  1. (1) 異常分娩
  2. (2) 妊娠中の薬剤使用
  3. (3) レイプへの対応
13) 麻酔科領域
1 経験すべき疾患
  1. (1) 挿管困難症
2 修得すべき技能
(1) エアウエイの挿入
(2) 気管挿管
薬剤を使った通常の経口挿管
Rapid sequence intubation
覚醒挿管
経鼻挿管
気管支鏡を利用した挿管
上記以外の気管挿管(心停止時など)
(3) 輪状甲状靱帯の穿刺または切開
(4) 気管切開
(5) バッグバルブマスクまたはJackson Rees回路による換気
(6) 末梢静脈路の確保(穿刺、カットダウンを含むこと)
(7) 中心静脈カテーテルの挿入
内頸静脈穿刺
鎖骨下静脈穿刺
大腿静脈穿刺
(8) 各種神経ブロック
(9) 鎮静法
3 必要な知識
  1. (1) ラリンゲアルマスクの使用法
  2. (2) コンビチューブの使用法
  3. (3) 分離肺換気
14) 運動器領域
1 経験すべき疾患または状態
(1) 関節炎
痛風発作
偽痛風発作
化膿性関節炎
(2) 急性の頸部痛をきたす疾患
急性項部硬直
頸部椎間板ヘルニア
頸椎症
(3) 急性の肩痛をきたす疾患
(4) 急性の腰痛をきたす疾患
筋・筋膜性腰痛症
腰部椎間板ヘルニア
強直性脊椎炎
骨粗鬆症
(5) 脊柱管狭窄症
(6) 横紋筋融解症
2 修得すべき技能
  1. (1) 関節穿刺
3 必要な知識
  1. (1) 病的骨折
15) 眼球および眼球付属器領域
1 経験すべき疾患
(1) 高度視力障害を伴う白内障
(2) 角膜炎、結膜炎
細菌性
ウイルス性
真菌性
(3) 急性緑内障発作
(4) 網膜疾患
眼底出血
網膜剥離
(5) 網膜中心動脈または静脈の閉塞症
(6) 霞粒腫および麦粒腫
(7) 眼球の化学損傷
(8) 電気性眼炎
(9) 結膜および角膜の異物
(10) 外傷
眼球打撲(角膜びらん、前房出血、外傷性散瞳を含むこと)
穿通性眼外傷
涙小管または鼻涙管の損傷
眼瞼の損傷
視束管骨折
眼窩骨折
2 修得すべき技能
  1. (1) 眼洗浄
  2. (2) 視野検査(器械を使用しない簡便なもの)
  3. (3) 眼底鏡(直接および間接を含むこと)
  4. (4) 細隙灯顕微鏡の使用
  5. (5) 角膜および結膜の異物除去
3 必要な知識
  1. (1) 全身疾患と眼病変の関連
  2. (2) 薬剤の眼に対する作用(副作用を含む)
16) 耳鼻咽喉領域
1 経験すべき疾患
(1) 外耳疾患
外耳炎
外耳道異物
耳垢症
耳介の外傷
(2) 中耳疾患
中耳炎
鼓膜穿孔
(3) 内耳疾患
耳性めまい(良性発作性頭位めまい、前庭神経、炎Meniere病を含むこと)
突発性難聴
(4) 流行性耳下腺炎
(5) 鼻の疾患
鼻出血
鼻腔異物
副鼻腔炎
(6) 咽頭・喉頭の疾患
急性扁桃炎(扁桃周囲膿瘍を含むこと)
咽頭異物(魚骨を含むこと)
急性喉頭蓋炎
反回神経麻痺
2 修得すべき技能
  1. (1) 耳鏡の使用
  2. (2) Frenzel眼鏡の使用
  3. (3) 鼻鏡の使用
  4. (4) 鼻出血の止血
  5. (5) 喉頭ファイバースコピー
3 必要な知識
  1. (1) 耳石置換法
  2. (2) 咽頭・喉頭の悪性疾患の概要
17) 歯牙および口腔領域
1 経験すべき疾患
  1. (1) う歯(疼痛を伴うもの)
  2. (2) 歯肉炎、口内炎
  3. (3) 唾石症
  4. (4) 顎関節脱臼
  5. (5) 歯牙の脱臼、破折
  6. (6) 上顎、下顎の骨折
18) 皮膚領域
1 経験すべき疾患
(1) 細菌感染症
伝染性膿痂疹
丹毒
蜂窩織炎
指の軟部組織感染症(ひょう疽、嵌入爪を含むこと)
(2) ウイルス感染症
帯状疱疹
単純ヘルペス感染症
伝染性軟属腫
(3) 白癬症
(4) 蕁麻疹
(5) 湿疹・皮膚炎(接触性皮膚炎を含むこと)
(6) 薬疹(Stevens-Johnson症候群を含むこと)
(7) 虫刺症の皮膚病変
3 必要な知識
  1. (1) 特殊な皮膚感染症(ブドウ球菌性皮膚剥脱症候群など)
19) 精神領域
1 経験すべき疾患
  1. (1) うつ病およびうつ状態
  2. (2) 統合失調症
  3. (3) 不安神経症
  4. (4) 境界型人格障害およびヒステリー
  5. (5) パニック障害
  6. (6) 神経性食思不振症
  7. (7) 認知症
  8. (8) 薬物依存症(アルコール依存症を含むこと)
  9. (9) 虐待
  10. (10) 悪性症候群
3 必要な知識
  1. (1) 自殺未遂患者への対応
  2. (2) DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)‐Wの概要
  3. (3) 精神医療に関する法律の要点
  4. (4) メディカル・ソーシャルワーカーおよび公的機関(保健所、警察など)との連携
  5. (5) 高次脳機能障害
20) 外因性急性病態(外傷、熱傷、中毒を除く)
1 経験すべき病態
(1) 異物
気道異物
消化管異物
泌尿器・生殖器の異物
軟部組織の異物(伏針を含むこと)
指輪等装身具の遺残
(2) 刺咬症
哺乳類による咬症
その他の動物による刺咬症(毒ヘビ、ハチによる刺咬症を含むこと)
(3) 熱中症
熱痙攣
熱失神
熱疲労
熱射病
(4) 低体温症
(5) 溺水
(6) 縊首
3 必要な知識
  1. (1) 上記以外の環境に起因する障害(凍傷、凍瘡 減圧症高山病、放射線障害など)
  2. (2) 高気圧酸素療法

(3) 管理運営の到達目標

  1. 患者の満足度を考慮し、その向上に努めることができる。
  2. 診療上および管理上の過誤を低減できる。
  3. プロフェッショナリズム(死への対処、倫理、生涯学習を含めた職業的態度)を涵養できる。
  4. 患者とその家族等、同僚医師、他職種医療従事者、救急隊員、行政関係者等とのコミュニケーション能力を向上させ、良好な人間関係を構築できる。
  5. 医療事故と医療過誤に適切に対処できる。

(4) その他の到達目標

  1. 地域、国、およびいくつかの外国の救急医療体制を理解し、それぞれの長所、短所を考察することができる。
  2. 災害医療を理解し、平時の準備に参画するとともに、災害発生時には医療チームの一員として行動できる。
  3. メディカルコントロールを理解し、地域における自らの役割を果たすことができる。
  4. 教育訓練コースの到達目標
    1. 後期研修プログラムの期間中に、JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)のプロバイダ資格、ALS(Advanced Life Support)のプロバイダ資格、JPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)のプロバイダ資格、ICLS(Immediate Cardiac Life Support)のインストラクタ資格をそれぞれ取得する。
    2. 後期研修プログラムの期間中に、PALS(Pediatric Advanced Life Support)のプロバイダ資格を取得することが望ましい。
  5. 研究活動の到達目標
    1. 後期研修プログラムの期間中に、少なくとも3回の救急医学に関する学会発表を行う。
    2. 後期研修プログラムの期間中に、少なくとも1編の救急医学に関する論文を発表する。

6. ER専従期間中の教育

(1) ERでの診療

ER医を育成するためには、ERに専従し、ER医の指導下に診療を行うことが必須である。

(2) カンファレンス

カンファレンスを定期的に開催する。症例カンファレンス(死亡、誤診、合併症、連携不備やクレーム、教育的症例)のほかに、救急医学に関わる話題、EBM、研究紹介、他部署との合同カンファレンスなどを行い、後期研修医にも発表の機会を与える。

(3) 教育活動への参加

ER医は臨床教師とならざるを得ない。このため、後期研修医を積極的に教育業務に参加させることは重要である。ERでの学生、初期研修医、後期研修医(後輩)への教育、カンファレンスの運営、各種教育訓練コースへの参加、コメディカルや一般市民への教育などがある。

(4) 後期研修医への教科書として以下を推奨する

  1. Tintinalli JE et al.(ed.):Emergency Medicine:A Comprehensive Study Guide.6th ed. McGraw-Hill, 2004.
  2. Hamilton GC (ed.):Emergency Medicine:An Approach to Clinical Problem-Solving. 2nd ed. W B Saunders, 2002.

7.ローテーション

ローテーションは以下の原則に従って行うこととする。
  1. 内科研修を6か月間以上とする。下記3.の専門内科を選択した研修期間を、内科研修期間に含めることができる。
  2. 内科の代わりに外科を6か月間以上研修してもよい。下記3.で専門外科を選択した場合、その研修期間を外科の6か月間に含めることができる。
  3. ローテーション研修の必要な領域
    1. フルタイム・ローテーションが望ましい領域
      1. 循環器科
      2. 神経領域:神経内科、脳神経外科、脳卒中科などのうち、救急症例の多い部署
      3. 消化器領域:消化器科、消化器外科などのうち、救急症例の多い部署
      4. 麻酔科
      5. 産婦人科
      6. 集中治療  D.またはG.と兼ねてよい。
      7. 重症外傷治療部門
    2. 外来診療に力点を置いたフルタイム・ローテーションが望ましい領域
      1. 整形外科
      2. 小児科
    3. フルタイム・ローテーションまたはパートタイム・ローテーション
      (ER研修期間中に定期的な出張研修を行うもの)のいずれかで研修することが望ましい領域
      1. 眼科
      2. 耳鼻咽喉科
      3. 画像診断
      4. 超音波検査
  4. 自施設のみでは適切な研修が困難な場合には、他施設で研修を受けるようにプログラム責任者が調整する。

8.評価

  1. 評価は重視されるべきである。
  2. プログラム責任者は、後期研修医が到達目標を達成できるように、定期的に評価を行い、個別に指導を行う。
  3. 他部署ローテーション中は、当該部署の指導者に評価を依頼する。
  4. 評価方法わが国のERにおける評価法は確立されていないので、ここではいくつかの評価法を紹介するに止める。いずれの評価法でも、結果を被評価者にフィードバックすることが重要である。
    A.評価シートによる客観的評価
    具体的項目ごとに段階的に評価する。項目としては、知識、プロフェッショナリズム、コミュニケーションスキル、臨床能力、経験した手技の内容とその数など多岐にわたる。
    B.診療現場に密着した評価
    後期研修医の診療場面に指導医が密着し、診療内容、接遇、時間配分などを評価する。
    C.患者や医療従事者(看護師など)を対象としたアンケート
    D.その他
    客観的筆記試験、口頭試問、OSCE、指導にあたる医師の合議なども用いられる。

9.研修スケジュールの例

モデルプログラム案に則った研修スケジュールの例を提示する。個々のプログラムにおける各科ローテーションの時期や期間については、原則の範囲内でのプログラム責任者の裁量にゆだねる(数字の単位は月)。
  フルタイム・ローテーション パートタイム・ローテーション
1年次
ER
5
小児科
3
循環器科
2
麻酔科
2
超音波検査
眼科
2年次
ER
6
消化器科
2
神経内科
2
整形外科
2
画像診断
耳鼻咽喉科
3年次
ER
6
外傷・集中治療
4
産婦人科
2
超音波検査
4年次
ER
6
他施設のER
4
選択
2
超音波検査

注)平成18年9月現在の日本救急医学会専門医認定基準によれば、上記の研修修了後には、救急科専門医認定申請の要件のうち、救急専従歴に関する条件を満たす(初期臨床研修のうち3か月間を救急部門で研修し、かつ後期研修の各科ローテート中に週1回の救急当直または救急当番を行った場合)。

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