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ER教育に関するFAQ

ERで“風邪引き”や“お腹痛(おなかいた)”ばかり診ていて勉強になりますか?

ERを受診するのは軽症だけではありません。ERには、自力、救急車、ときにヘリコプターなど、いろいろな手段であらゆる重症度の患者さんが受診します。救急患者のなかで重症は5%以下にすぎませんが、たとえば年間4万人が受診するERでは、千数百人程度の重症患者さんが治療を受けることになります。充実したERでは、重症を診療する機会も豊富なのです。

重症はもちろんのこと、圧倒的多数を占める、重症以外の患者さんの初期診療もきちんとできるようになるのが、ERで勉強する目的です。救急車でERに搬入される患者さんの約50〜60%、自分でERを受診する患者さんの約90%は外来診療の後に帰宅するので、応急処置だけでなく、外来診療を完結させる訓練も十分に行なわれます。

また、一見軽症で実は重症という患者さんは大勢います。そのような患者さんを確実に見つけ出し、手遅れにならないうちに適切な治療を受けていただくようにするのがERの存在理由のひとつです。ERを訪れる多数の患者さんを同時進行で診ることによって、そのような隠れた重症を判別する能力が訓練されます。

ERでは専門的医療が学べないのではありませんか?

ERでの診療に専従する医師(ER専門医)は、あらゆる救急疾患の初期診療に特化した専門家です。ERでの医療は、従来の臓器系や疾患単位の“奥に向かった”専門性ではなく“間口の広さ”に重点を置いているからです。

「専門的医療」という言葉を、ある領域の高度で複雑な処置・手術や、特殊な医療の意味で使われているのであれば、それらは集中治療室、病棟、手術室、血管造影室などで各科専門医を目指す医師が修得するものです。ERで研修する目的は別のところにあります(Q1参照)。

ERでは患者さんと一期一会です。長期的な医師−患者関係が築けないので魅力に乏しいのではありませんか?

患者さんと人生を分かち合うといった意味での医師−患者関係を築くことは、確かに難しいと思います。ただ、病気は24時間待ったなしですから、ER専門医は患者にとってこの上なく有難い存在であり、患者が困った時に手を差し伸べることが目的で医師になったのであれば、医者冥利に尽きるでしょう。

また、医療訴訟が増加した昨今、一期一会ゆえの医療過誤は許されません。そのためには、医療の知識技術だけでなく、Professionalismや患者との良好なコミュニケーション能力が不可欠です。すなわちプロとしての自覚なしにER専門医は勤まりません。自ずとER専門医としての誇りが生まれ、急性期疾患を扱っていてもその中に魅力は見出せるようになります。

ERでは研修医の指導は誰が行なうのでしょうか?

ER診療に専従する医師(ER専門医)が主に行ないます。ER専門医にとって、研修医の教育は診療と並んで主要な業務です。また、入院や緊急手術等の必要な場合には、診療を引き継いだ各科の専門医が、患者がERに滞在する間、研修医を指導することもあります。

ERでの教育を受けることは、どんな人にとって有益でしょうか?

研修医はもちろん、医学生、各科の若い医師、看護師、救急救命士など、多くの医療従事者や医療系学生にとって、多様な症例を豊富に経験できるERでの教育は有用と期待されます。とくに将来、ER専門医を目指す研修医にとって、ERで計画的な教育を受けることは不可欠です。

医師の初期臨床研修におけるERローテーションの意義は何でしょうか?

平成16年度から始まった新しい初期臨床研修制度では、将来の専攻科目の如何にかかわらず、基本的な日常診療を広く学ぶことが主目的とされています。将来、自分の専門外だからと患者さんをたらい回しにすることが起こらないように、各科の最低限の標準的知識・技術を獲得しなければなりません。

診療科や重症度によって評価選別される前の患者さんが数多く受診するERは、そのような目的によく適合した研修部署です。各診療科の専門化が進んだ結果、総合的な診療を行う科の少なくなった現状を考えると、ERローテーションを欠く初期臨床研修が、十分と言えるかどうか疑問です。国際的にも、ERのローテーションは卒後臨床教育に必須と考えられています。

ERでの診療に専従する医師(ER専門医)になりたいのですが、どこで研修を受ければよいでしょうか?

ER専門医になるには、ER専門医養成の目的を明確に打ち出したプログラムに沿って研修を受けるのが効率的です。米国にはそのようなプログラムが多数存在しますが、米国での医師免許が必要なうえに、人気が高いために競争が激しく、日本人医師にとっては相当の難関です。

国内では、新しい臨床研修制度が3年目を迎えるのに応じて、各科専門医の養成を目的とした後期研修プログラムが開始されます。その一部に、ER専門医の養成を目的としたコースがあります。これらの内容に関しては、全国の臨床研修病院や大学病院のホームページ等で検索のうえ、個別にご確認下さい。日本救急医学会ER検討委員会は、ER専門医養成のための後期研修の標準的プログラム作成に取り組んでいます。

開業する予定です。開業準備の一環として、救急診療の基本を短期間で能率よく勉強したいと思います。何かよい方法はありますか?

ER専門医養成のための研修プログラムでは、あらゆる種類の救急患者の診療を豊富に経験でき、また計画的に組み入れられた各科ローテーション研修も可能です。わが国でも、家庭医養成のための後期臨床研修プログラムが始まっていますが、ER専門医養成のための研修プログラムの全部または一部を利用できれば、開業医に本来要求される診療能力を養成するために大いに役に立つはずです。Q7を参照のうえ、ER専門医養成プログラムの責任者と相談されてみてはいかがでしょうか。

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